広島永川勝浩投手(32)が、3年ぶりの開幕1軍切符を手に入れた。27日に、開幕ロースターが発表された。オープン戦で9試合連続無失点と好調を維持し、信頼を勝ち取った。中継ぎの一角を任されることになる。「1つ目の目標をクリアした」と話すかつての守護神が、完全復活に向けてスタートラインに立った。

 第2章がここから始まる。不退転の覚悟を決めていた永川勝が、3年ぶりの開幕1軍を勝ち取った。完全復活への第1関門を突破し、安堵(あんど)と緊張感が心の中に両立していた。

 「1つの目標はクリアしたということ。内容はまだまだだけど、結果が出たので100点。ただ、まだこんなもんじゃない」

 文句ない選出だった。オープン戦9試合に登板し、防御率は0・00とこれ以上ない成績を残した。その上、与えた四球は3つと、課題だった制球力も改善された。

 最大の要因はスライダーの完全習得だ。カウントを稼ぐ球種を手に入れることが目的だったが、実戦を重ねるうちに投球の軸となった。代名詞だったフォークのイメージが強く、威力は絶大だ。

 「スライダーで勝負に行っても打たれなくなった。勝負ができる3つ目の球種になった」

 投球スタイルも一新した。かつての荒々しさはなく、常にセットポジションからの投球。これまでのワインドアップでは球威のあるボールを投げられる半面、力みからバランスを崩すことがあった。生き残りに必要なのは、安定感だった。

 野村監督も、復活の兆しを見せる右腕をねぎらった。「自分で勝ち取った1軍。去年は1軍で投げていない中で、結果を出したから」。昨季はプロ10年目で初の1軍登板なし。まさに一からのスタートだった。まずは中継ぎからだが、守護神という“定位置”復帰へも意欲を見せる。

 「(クローザーは)中継ぎの中でも、一番良い投手がやるポジション。中継ぎで、誰よりも良い成績を残そうと思っている」

 投球スタイルが変わっても、球団記録の164セーブの勲章は消えない。新たな野心を胸に、永川勝が再出発する。【鎌田真一郎】