<ロッテ1-4ソフトバンク>◇29日◇QVCマリン

 20歳のセットアッパー千賀滉大投手の好投が、ソフトバンクに連勝を運んできた。育成4位入団からのシンデレラストーリー。昨秋に引退さえ覚悟する右肩痛に見舞われたが、その雌伏の時が、狙って三振を取れる剛腕を生んだ。4月戦線だけで敗戦処理から「7回の男」までのし上がった右腕の出世物語に迫る。

 千賀が任務を遂行した。剛球でロッテの反撃ムードを断ち切った。1点リードの7回に登場し、いきなり清田に中越え二塁打。1死三塁のピンチから代打福浦、好調井口にひるまず真っ向勝負を挑んだ。福浦には152キロ外角直球で遊ゴロ、井口には真ん中低めに152キロを投げ込み右飛に打ち取った。「やられたと思いました。直球だけで仕留められてよかった」。4ホールド目。ピンチを切り抜けベンチのムードは高まり、直後に勝利を決定づける2点が入った。

 ◆敗戦処理から

 今季12試合に登板し、失点は初登板だった3月31日楽天戦の3点のみ。4月は11試合、14回1/3を投げ無失点。開幕直後は敗戦処理で2軍に一番近かった男が結果を積み重ね、今や欠かせないセットアッパーとなった。

 ◆消えるフォーク

 11日オリックス戦では自己最速の155キロをマーク。ベテラン細川を「消えたのは初めて」と驚かせる落差のあるフォークと縦に曲がるスライダーで、狙って三振を奪えるのが強みだ。

 ◆掘り出し物

 愛知・蒲郡出身の無名右腕。本人は会ったことがないスポーツ店の店主からソフトバンクに情報が入り、育成4位で指名された。12球団でも下から数えて7番目とまさに掘り出し物。昨年4月に支配下登録され、2度先発した。

 ◆引退を覚悟

 順調にステップアップしていたが、昨年秋に右肩を痛めた。秋季キャンプ、プエルトリコのウインターリーグも断念した。1月の自主トレでは「引退、クビになるかも」と思い込み、キャッチボールがまともにできなかった。当然のようにキャンプはB組(2軍)スタートだった。

 ◆けがの功名

 4カ月間休ませ続けた肩が復調した。その間のトレーニングで他の部分がスケールアップ。キャンプ初日にいきなり200球を投げてアピールしA組に昇格した。

 ◆宇宙へ

 名前の「滉大」は俳優岩城滉一(62)にちなんでつけられた。岩城は先日、宇宙飛行への挑戦を発表した。千賀も「今年は1年間このまま活躍したい」と、大きく羽ばたこうとしている。【石橋隆雄】

 ◆千賀滉大(せんが・こうだい)1993年(平5)1月30日、愛知県蒲郡市生まれ。蒲郡中部中では三塁手。蒲郡で投手に。1年からベンチ入りするも故障などで2年秋、3年春は投げていない。家族は父直伸さん(52)、母和江さん(43)、妹瑚都乃さん(18)。185センチ、83キロ。血液型A。右投げ左打ち。推定年俸650万円。