<中日0-1ヤクルト>◇6日◇浜松

 2年目右腕が最下位ヤクルトにかすかな光をもたらした。古野正人投手(26)が、5連勝中だった中日を6回4安打無失点に抑えてプロ初勝利を挙げた。7月3日のプロ初先発では3回KOで2軍落ち。先発投手の降格が相次ぎ、巡ってきた2度目の先発機会を生かした。

 初勝利のヒーローインタビューにもかかわらず、古野は小声だった。6回まで無失点だったが7回の投球練習中に降板。「足がつってしまいました」と頭をかいた。いつも以上に発汗して脱水症状になり、7回の走塁時から左ふくらはぎがつり始めていた。がむしゃらに投げてつかんだ初勝利に「素直にうれしい」とほおを緩めた。

 ヤクルトにとって今後の分岐点となる一戦だった。村中と赤川が不調で2軍落ちし、ロマンも負傷離脱。先発ローテーションには小川、石川、八木の3人しかいなくなった。8月に巻き返すには、第4、5の先発投手の台頭が必要不可欠。そんな台所事情から、2軍で結果を出した古野にチャンスが転がってきた。

 古野も置かれた状況は分かっていた。プロ初先発だった7月3日のDeNA戦は3回3失点KOで即2軍落ち。「これでダメなら、もうダメ」と覚悟を決め、「これが自分の投球」という打たせて取る投球に徹した。シュートを軸に「いつも以上に丁寧に」と、低めを丁寧に突いた。

 最大のピンチでも信念は揺らがなかった。6回2死満塁で、中日平田に2ボールからボールになるのを恐れず、シュートを投じて遊ゴロに仕留めた。“ラストチャンス”をものにした古野に、荒木投手コーチも「持ち味を出してくれた」と称賛した。

 プロ初勝利の地・浜松には「出世城」と言われる浜松城がある。「いいですね!

 (登板前に)見えました」と笑った。次回について、荒木投手コーチは「もちろん先発です」と明言。待ちに待った起爆剤候補が誕生し、最下位ヤクルトに少し光が差し込んできた。【浜本卓也】

 ◆古野正人(ふるの・まさと)1986年(昭61)9月27日、兵庫県生まれ。報徳学園3年のセンバツで背番号6、夏の甲子園では片山(現楽天)の控え投手として甲子園のベンチに入ったが出番なし。龍谷大-日産自動車-三菱重工神戸を経て11年ドラフト6位でヤクルト入団。昨季は1軍登板がなく、今年4月19日の阪神戦(甲子園)で1軍デビュー。今季通算7試合で1勝0敗0セーブ、1ホールド、防御率3・14。178センチ、80キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸760万円。