昨季は61試合に登板して防御率1・97だった阪神加藤康介投手(35)が22日、甲子園で自主トレを行った。昨季の活躍にちょっぴり達成感を味わっていたが、昨年12月恩師の工藤公康氏(50=日刊スポーツ評論家)に“ダメ出し”を食らい目が覚めた。40歳現役を目指し妥協なく汗を流す。
誰もいない、寂しい甲子園から「熱気」が伝わってきた。加藤は外野フェンス際を黙々と走る。ロングダッシュも繰り返した。
加藤
今年がダメなら、逆戻りという気持ちはあります。この1年をいい形で終われるか、終われないかで、僕の人生が変わる。何でも3年…。3年、続けないと。1年間、1軍にいるのは去年、最高の目標だったけど、今年は最低ライン。最低50試合投げて、防御率1点台ですね。1年1年の積み重ねですけど、あと5年、何とかやりたい。
プロ14年目のベテランは苦節の連続だ。1度のトレード、2度の戦力外通告…。そこからはい上がり昨季は大車輪の働きだ。それでも、一息つかずに「40歳現役」を目指す。師匠のひと言が後押しだった。昨年12月、横浜でチームメートだった工藤公康氏に会った。野球観に心酔し、224勝を挙げた大先輩からはシーズンのねぎらいもそこそこに、奮起をうながす強烈な“ビンタ”を浴びた。
加藤
すぐに(心境を)察知したんだと思います。まだ、これもできない、あれもできない…という感じで。まだまだアカン、と。去年は自分の掲げた目標をクリアできて少し達成感を覚えてしまっていた。これを引きずってはいけない。現状に満足してはいけないとね。「まだまだ」と思わせてくれる存在ですね。
阪神の左腕で最年長だ。加藤は「今年1年がすごく大切です」と語気を強める。苦労人が描くサクセスストーリーもまた濃密なドラマだ。細腕をしならせるため、愚直なまでに真っすぐ歩く。【酒井俊作】<阪神加藤の天国と地獄>
◆01年
前年ドラフト2位でロッテに入団。1年目から9勝をマークし、期待に応えた。
◆02年
自己最多の11勝を挙げ、先発の地位確立。
◆03年
体調不良でわずか1勝にとどまった。その後、故障が相次ぐ。
◆07年
金銭トレードでオリックスに移籍。
◆08年
オフに戦力外通告。トライアウトを受けて、横浜に入団。
◆10年
オフに戦力外通告。阪神秋季キャンプに参加して、入団が決定。
◆12年
41試合に登板して防御率0・83。
◆13年
61試合に登板して防御率1・97。