男の決断だった。広島が27日、ヤンキースをフリーエージェント(FA)となっていた黒田博樹投手(39)を獲得したと発表した。07年以来8年ぶりの古巣復帰となる。メジャーからの高額オファーを断って、推定年俸4億円プラス出来高払いでの復帰を決断。広島愛を貫いた男が、前田とのダブルエースで91年以来の優勝に導く。

 「帰ります」。前日26日、黒田は広島鈴木球団本部長に電話で復帰を伝えていた。球団の、ファンの、広島市民の思いが届いた瞬間だった。07年以来、8シーズンぶりの古巣復帰がこの日、発表された。メジャー通算79勝のエースが、再び赤いユニホームに袖を通すこととなった。

 まさにおとこ気だった。年俸は球団史上最高額となる4億円プラス出来高払い。だが、メジャーの複数球団からは、40歳シーズンを迎えても20億円前後の高額なオファーが届いていた。その中でも「最後は広島で終わりたい」と、かねて話していた思いを実現。金額だけではない、広島愛を貫いた決断だった。

 シーズン後に帰国した際には広島と3度の直接交渉。鈴木球団本部長は「彼と話した中で、ファンにもう1度、ユニホームを着ている自分の姿を見せたいという使命感が一番強かったと感じた」と心境を推し量った。これまでも毎年、獲得オファーを出し続けていた。背番号は7年間空けていた15番に決まった。

 前田とのダブルエースが投手陣の中心となる。鈴木本部長は「マエケンと黒田がそろってというのが一番強いというのは伝えた。両輪であるのは間違いない。若い選手が多いし、メジャーの経験を伝えてくれたら」と技術以外の精神面でも、相乗効果を期待。前田、黒田、大瀬良と先発陣にも厚みが増し91年以来のリーグ優勝も現実味を帯びる。

 現在は米国でトレーニングを続けており、チームへの合流は2月16日に始まる沖縄キャンプ以降となる見込み。メジャーで慣れた調整をこなして、合流してもらう特例措置だ。既に球団はNPBの公式球と日本人打者のビデオを送付。万全の状態での復帰をサポートする。2月10日で40歳。黒田は優勝という最後の大仕事をやり遂げに、広島のマウンドに立つ。【池本泰尚】

 ◆黒田博樹(くろだ・ひろき)1975年(昭50)2月10日、大阪府出身。上宮-専大を経て96年ドラフト2位(逆指名)で広島入団。05年最多勝、06年最優秀防御率。巨人戦通算20勝17敗と勝ち越し。07年オフにFA権行使でドジャース入り。09年開幕勝利。12年にヤンキース移籍。大リーグ通算79勝は野茂(123勝)に次ぐ日本人2位。父一博氏(故人)は南海などで外野手、内野手。185センチ、93キロ。右投げ右打ち。