<全日本大学野球選手権:早大4-0亜大>◇18日◇決勝◇神宮

 早大(東京6大学)のスーパールーキー吉永健太朗投手(1年=日大三)が、先輩の斎藤佑樹(日本ハム)に続いた。亜大(東都)の今秋ドラフト1位候補右腕、東浜巨投手(4年=沖縄尚学)との投げ合いを制し、7回4安打無失点で今大会2勝目。早大を5年ぶり4度目の優勝に導き、1年生では斎藤以来2人目の最高殊勲選手に選ばれた。昨夏甲子園、国体に続き、高校、大学と連続で日本一となった。

 高校に続く日本一が決まると、ベンチから飛び出した吉永は笑顔で歓喜の輪に加わった。「優勝は何回してもうれしい。昨日は途中で崩れていたので、何とか取り返したかった」。7回4安打無失点で東浜との投げ合いを制し、最高殊勲選手も獲得。「好投手で打線が何点も取れないと思っていた。打線が点を取ってくれて優勝できた。最高のチームです」と感謝した。

 3点リードの5回1死三塁、負けない投球術が凝縮されていた。2球目のスクイズに対し、直球を高めに外した。ファウルとなり3球目。連続のスクイズに、今度は低め直球で空振りを奪い、三塁走者を挟殺した。「走者三塁の時はゆっくり足を上げるようにしている」。走者の動きを視界にとらえ、2球連続でスクイズを見破った。直球は最速144キロをマークし、左打者への必殺シンカーも効果的だが、投手としての総合力の高さを改めて披露した。

 前日に98球を投げた疲労はあったが、発奮材料があった。試合前、プロ初完投したばかりの楽天釜田から「頑張れよ」とメールが入った。高校ジャパンからの友人で、直球やカットボールの握りを教わった間柄。「完投お疲れさま。すごいな」と返信はしたが、同学年の活躍は「相当刺激になりました。少し悔しい」とさえ思った。大学4年間で成長し、即戦力でプロ入りという夢を抱くだけに、別の進路で成長している姿を証明したかった。

 春のリーグ戦では最優秀防御率のタイトルに加え、最多タイの4勝、奪三振も最多と、斎藤の1年春を超える活躍を見せた。今大会でも斎藤に次ぐMVPを獲得。それでも「賞はあっても実力的にはまだまだ。球速も制球力すべて伸ばしたい」という謙虚な右腕。昨年はドラフト指名確実ながらプロ志望届を出さず、あえて選んだ大学生活は、順風満帆なスタートとなった。【斎藤直樹】

 ◆吉永健太朗(よしなが・けんたろう)1993年(平5)10月13日、東京・八王子市生まれ。小学1年から南平アトムズで野球を始める。七生中時代は調布シニアに所属。日大三では2年秋からエースとなり明治神宮大会優勝。3年春にセンバツ4強、夏の甲子園優勝、アジアAAA選手権、国体優勝。182センチ、80キロ。右投げ右打ち。家族は両親と妹、弟。

 ▼早大・吉永が決勝で勝利投手。全日本大学選手権決勝で1年生が勝ったのは53年池戸弘昌(平安-立大)65年芝池博明(滝川-専大)95年矢野英司(横浜-法大)07年斎藤佑樹(早実-早大)に次ぎ5人目。前年夏の甲子園優勝投手が大学1年で優勝投手になったのは前記斎藤に次いで2人目。吉永は日大三時代の昨春東京都大会から公式戦20連勝。