新型コロナウイルス感染対策のため、日本政府は2月26日に今後2週間のスポーツ、文化大規模イベントを中止、延期するよう要請。その影響はプロレス界にも波及している。現段階での各団体のさまざまな対応をまとめた。

主なプロレス団体の新型コロナウイルス感染拡大への対応(3月1日現在)
主なプロレス団体の新型コロナウイルス感染拡大への対応(3月1日現在)

3月に国内で予定されているプロレス興行は数百人から数千人まで団体や大会によって集客の規模が異なり、政府の定義する「大規模なイベント」にあてはまるかは難しいところだ。興行開催可否は各団体の決定に委ねられた状態で、そのため対応はさまざまに分かれた。

最大手の新日本プロレスは2月26日、3月1日から15日までの11大会を中止すると発表。3月3日に大田区総合体育館で予定していた旗揚げ記念大会では、メインでIWGPヘビー、同インターコンチネンタル2冠王者内藤哲也対IWGPジュニアヘビー級王者高橋ヒロムが初の師弟シングル戦を行う予定だったが、流れてしまった。内藤は公式サイトの日記で「いまは残念でしかないけど…。またいつか、最高のタイミングでオレは彼の名前を叫びますよ。『高橋ヒロム!』ってね」と実現を願った。3月4日開幕予定のシングルトーナメント戦「ニュージャパン杯」を代替日程で開催するかは未定だ。

試合中止の代わりに無観客試合を動画配信すると決めたのが女子プロレス団体のスターダムと、DDTグループ。スターダムは、3月8日の後楽園大会を無観客で実施し、その模様をYouTubeで無料配信。「スーパーチャット」と呼ばれる支援金を募る。自社の動画配信サービスを持つDDTは道場マッチを配信する。

2月28日、アントニオ猪木60周年記念大会を開催したプロレスリング・マスターズ
2月28日、アントニオ猪木60周年記念大会を開催したプロレスリング・マスターズ

一方、予定通り試合を行う団体も多い。初代タイガーマスク、佐山サトルが主宰するリアルジャパンは3月19日の後楽園大会を決行する。76年の猪木対アリの異種格闘技戦を実現させた“過激な仕掛け人”こと新間寿会長は2月26日都内で行われた会見で「コロナウイルスなんかふっとばす」と世間のイベント自粛ムードに否定的な意見を示した。やや過激な発言だっただけに、2日後あらためて平井丈雅社長に反響を聞くと、「批判は少なく、むしろ『よく声をあげてくれた』と言ってくださる方が多い」と明かした。

大日本プロレスも3月16日横浜文化体育館での旗揚げ25周年記念大会など予定通り決行。登坂栄児社長は「今はすべて開催する予定だが、開催場所の市町村から自粛要請などがあれば対応する」と柔軟に応じる構えだ。団体によっては経営的に興行中止とできない場合もある。1日に後楽園で旗揚げ19周年大会を行ったゼロワンの笹崎勝巳取締役は「うちは難しい」と苦しい胸のうちを明かした。

武藤敬司がプロデュースするプロレスリング・マスターズは2月28日後楽園ホールで今回はアントニオ猪木氏のデビュー60周年記念大会を開催。キャンセルが約300件あったものの1328人の観衆を集め、大盛況に終わった。武藤は「今回やらなかったら、1人欠けるかもしれないから必死でやったんだよ」とブラックジョークで決行理由を説明。「今の時点ではやってよかった」と悩んだ末の開催に胸を張った。