「RIZIN男祭り」が4日に東京ドームで行われた。リング内外で多くの悲喜こもごもがあった日本最大級の格闘技イベントを取材して感じたことを、思いつくままに書いてみたい。
●負けた方がのちのち良いこともある
セミファイナルの「朝倉未来VS鈴木千裕」で元フェザー級王者の鈴木が本領を発揮できずに敗れた。朝倉に何度もテイクダウンを許し、それを打開するような動きもあまり見られずに完敗。多くの有識者がケガによる「コンディション不良」を指摘した。
鈴木は言い訳をしなかったが、試合後の会見で「もちろん目指すべきものはチャンピオンですよ。もう1回チャンピオンに戻るのが当然ですけど、そのためにはちょっと休みますね。ちょっとというか、しっかり休みます。で、体をちゃんと戻して、良い環境を作って。であれば負けないですよ」と、故障箇所をしっかり治すと宣言した。
少し前まで「最短で王座に返り咲く」と話し、「これが俺のやりたいこと」と連戦もウエルカムだと言っていた男が「休む」というのだから相当、体が悪いのだろう。だがスポーツ選手は勝ち続けているうちは「休む」とは言いづらいもの。この敗戦を良い機会とし、体をきちんと回復させられれば、今まで以上に強い鈴木千裕になれるのではないだろうか。
●キックボクサーのMMA転向は本音を言えば好きではない
今大会ではRISE2階級制覇王者の田丸辰と、元Krushフェザー級王者篠塚辰樹がMMAデビューを果たし、ともに完敗した。でもこれはサッカー選手が野球に挑戦して初戦で4三振するようなもの。別競技なのだから仕方ない。ただMMAが立ち技よりも上の競技かのように考える格闘技ファンが多少なりともいるのが好きではないのだ。
キックの選手がMMAに転向する理由はいくつかあるが、ファイトマネーもそのうちの1つだろう。現状、RIZINと国内立ち技団体の間には、ファイトマネーでかなりの差があると聞く。だから多くのキック選手が今以上の名声やお金を求めてMMAに転向する。
それは彼らの判断で、他人がとやかく言うことではない。でも立ち技が好きな筆者としては、彼らがMMAで戦うところを見たいわけではないので、それならONEやGLORYなど海外プロモーションで立ち技を続けてほしいというのが本音だ。
もちろん純粋にMMAに挑戦したいという選手についてはこれからも応援したい。
●サバテロは新鮮な驚きだった
太田忍に3回TKO勝ちしたダニー・サバテロ(米国)は元ベラトール戦士とはいえ、直近5試合は1勝3敗1分け。有識者からの評価も「レスリングをベースに塩漬けで勝つ、試合がまったく面白くない選手」というものだったので、全然期待していなかった。
しかし立ち上がりから鋭い打撃を当て続け、レスリング五輪銀メダリストの太田を圧倒した。3回に太田がサバテロを抱え上げてマットに落としたところ、自らも頭部をマットに打ちつけるアクシデントがあったが、それがなくてもサバテロが圧勝していたように思う。
サバテロは試合後には、オープニング・セレモニーでふんどし姿で太鼓をたたいたレジェンド、マーク・コールマンについても言及。「数日前にホテルで見かけて、すぐに駆け寄って話をさせてもらって。試合中も回の合間に言葉をかわしたんだ。あんなレジェンドにリングサイドから応援してもらって、とても励みになったよ」と大きなリスペクトを示し、上機嫌でRIZINバンタム級王座奪取についても宣言。クレベル・コイケを秒殺してフェザー級王者となったシェイドゥラエフに続き、RIZINは良い外国人と契約したなと感じた。
●前座合わせて19試合は多すぎる
「男祭り」とはいえ、オープニングファイト3試合を含めて全19試合はさすがに多すぎると感じた。正直、東京ドームで高いお金を取ってファンに見せるレベルに達していない試合もあった。あの19試合のうち、厳選9~10試合でも同じ満足感は得られたと思う。
東京ドームでやる以上、収益確保は最も大事な要素の1つだし、集客力のある選手は実力にかかわらず、それだけで試合を組む価値があるのかもしれない。それは格闘技だけに限ったことではなく、他の競技でもファンやスポンサーがついているからチームと契約できるという選手はいる。
それでもRIZINは現時点で日本のMMAイベントの頂点に立つ舞台。あまりにカードを乱発すると、その価値が下がってしまうように感じる。簡単に出られる大会ではない、そういう存在であり続けてほしい。
●そうはいっても榊原信行CEO以下、RIZINスタッフの皆さん、おつかれ様でした
いろいろ書いてはきたが、あの規模の大会をあのRIZINのスタッフ数で成功させるのは並大抵のことではない。特に榊原CEOのリーダーシップ、そしてあの満員の東京ドームのファンの前でふんどし一丁で登場する度胸…ビッグ・リスペクトしかないです。
【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)


