力士を「太った人」と思うなかれ。柔らかい脂肪の下には屈強な筋肉が詰まっている。最たる例が、角界随一の肉体を誇る妙義龍(29=境川)だ。日体大卒で体の構造に詳しく、理詰めで鍛え抜いた体重153キロの筋肉量は113キロ超(約74%)。昨年特定保健用食品のCMに出演して「体脂肪率22%」と明かし話題になったのは記憶に新しい。

 先月発売されたベースボール・マガジン社の「トレーニングマガジン」では、力士個人で初めて特集された。サプリメントの摂取方法や食生活など、5ページにわたって力説。「僕のすべてが詰まってます」と胸を張る。同誌では昨年8月に角界から初めて、伊勢ケ浜部屋のトレーニング室などが紹介されたばかり。担当者は「相撲人気で身体能力への注目も高まっている」。周囲の目も変わってきた。

 力士の愛読者も多く、ベテラン安美錦は懸垂ができる数少ない力士の1人。「体中ボロボロ」とぼやくが、若い衆を負ぶって鍛えるなどトレーニングへの意識は高い。日馬富士を破った嘉風は数年前から愛読。昨年は旋風を巻き起こした。

 5勝目を挙げた妙義龍は言う。「力士はアスリートですから」。最近は女性ファン増加で力士がアイドル化しているが、理想を追い求める肉体が織りなす業にもぜひ、注目してほしい。【桑原亮】