関取衆最年長の40歳、西十両11枚目安美錦(伊勢ケ浜)が、史上8人目の通算900勝に王手をかけて千秋楽に臨む。

この日は徳勝龍に押し出されて7勝7敗となったが「あと1日。勝ってきたような相撲で集中できれば」と、落ち着いて話した。4場所ぶりの勝ち越しがかかる節目の900勝には「来場所に持ち越しかな」と冗談っぽく話しつつ、まだ現役生活を続けたい心の内をかいま見せた。

今場所の安美錦は特に、取組後に大勢の報道陣に囲まれる。横綱貴乃花の最後の対戦相手で、自身も兄弟で幕内を務め、師匠で元横綱旭富士の伊勢ケ浜親方は父のいとこ。今場所6勝未満なら幕下陥落が濃厚、引退も-。そんな中で初日から4連敗したが、5連勝と立て直し「前半を考えれば引退発表していてもおかしくない」と笑っていた。

一方で東日本大震災から8年の2日目には「みんな一生懸命頑張っている。星があがらないぐらいで落ち込んでいる場合じゃない」と、故郷青森と同じ東北地方の仲間を思った。十両残留が濃厚な6勝目を挙げた11日目には「40歳にもなって、まだ緊張する」と、胸中を明かした。力士という特殊な環境にいながら、一般に近い感覚を持つ。40歳でなお、存在感は増している。【高田文太】