WWEの元NXT女子王者イヨ・スカイ(紫雷イオ=32)が8月からロウ所属として活躍している。9月3日(日本時間4日)、英ウェールズのカーディフで開催されるWWEクラッシュ・アット・ザ・キャッスル(CATC)大会でアスカとの6人タッグ戦が決定するなど話題に事欠かない。ロウ入りを契機に新リングネームとなった経緯、約3カ月間の戦線離脱、ベイリー、ダコタ・カイとの深い絆などを日刊スポーツのインタビューで明かした。今回は後編となる。
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7月30日の真夏の祭典サマースラム大会で紫雷は新リングネームのイヨ・スカイとして姿をみせた。4月2日のNXTスタンド&デリバー大会以来、119日ぶりの登場。これに合わせて変更されたリングネームについて解説した。
「このタイミングでリングネームを変えないといけないとなりました。いくつか候補があり、私の意見が入っています。『ジーニアス・オブ・ザ・スカイ』を代名詞で使っていたので、スカイはいいかなと。日本で紫雷イオは漢字からイメージがわきやすいですし、インパクトもあると思います。一方で英語表記になるとIO(イオ)が数字の10に見えたり、IがフォントによってはLの小文字に見えたりする。ロウ・スカイと読む人もいたので、間違えにくいIYO(イヨ)はいい。今はイヨ・スカイがインパクトある、覚えやすいイメージになったと思います」
NXTからロウに所属が変わり、レスラー生活は一変した。ロウの選手となって以降、この1カ月間は慣れない移動続きのライフスタイルを体験し、WWEトップのレスラーとしての自覚もさらに確立された。
「これまでNXTは米オーランドのスタジオで収録でした。ロウになってから、例えば金、土、日、月と移動して試合するという生活サイクルになりました。これがメインロースターの生活なのかと感じています。環境が激変した感じはあります。バタバタして大変というよりも、順応していかないといけないですし。生活が新しくなると、人間なので体がこのサイクルに慣れていない。今はこのタフな生活に体が順応してくれるように、と思っています」
この多忙な生活に入る直前まで、スカイはリハビリに専念していた。NXT最後の登場となった4月のNXT大会で組まれた4WAY形式NXT女子王座戦の際、右足首の骨を折った。
「WWEからオフィシャル公開されていないけれど、ケガしていました。王座戦で場外にムーンサルトした時でした。この大会がレッスルマニアと同日開催で試合会場がバタバタだったのです。リング周辺のチェックができない状況のままで試合し、アナウンステーブルのところにつま先を強打しました。試合はアドレナリンが出ているので耐えることができましたが、激痛でしたね。最初は捻挫の診断でしたが、回復が遅いので再検査したら足首の距骨(きょこつ)が骨折していました」
3カ月近くのリハビリはコロナ禍も重なり、松葉づえ生活で、メンタル的にも苦しかった。1度、日本に帰国し、リハビリに取り組んでいたという。
「保存治療では治らず、手術が必要でした。砕けた骨と骨をつなぐボルトを入れました。体重を患部にかけてはいけない期間が2カ月。ジャンプ禁止が3カ月。松葉づえで外にも行けないし、生活用品の買い物さえも行くことができない。もともと運動をたくさんしている人間が動けないので、足の筋肉も、メンタルも落ちました。試合できない事実は変わらないのでポジティブな気持ち、落ち着いた状況で安心してリハビリできるように、と歩けるようになってから日本に戻りました。良い意味でリフレッシュできて、しっかりとリハビリ、調整ができましたね」
ベイリーをリーダーにカイと3人でユニットとして行動している。ベイリーは昨年7月、練習中に前十字靱帯(じんたい)損傷して離脱。負傷こそしていないが、カイは4月にWWEから解雇されていた。3人ともどん底を味わってからの復帰。境遇が似ていた。
「3人ともビッグカムバックだなと思います。ベイリーは長くケガで離脱し、ダコタは1度会社から解雇を言われました。彼女に解雇の連絡がきたところに周りも、私自身もすごくショックだったし『なぜ彼女が!?』という気持ちでした。彼女も精神的につらかった期間があった中での復帰で、私は私で右足を負傷していて。3人の思い入れと絆は強いです。『ここから』と3人でよく話しますし、実際に仲が良いし、2人は性格、試合を含めて素晴らしい選手、人間です。『タイミングの奇跡』という出会いです」
92年のサマースラム大会以来、30年ぶりの英スタジアム大会となるCATC大会では、この3人が同時出場する初試合になりそうだ。対戦相手にアスカ、アレクサ・ブリス、ビアンカ・ブレアと王者経験者が並ぶ6人タッグ戦という注目カードになる。大会には7万人の観衆が集結する。
「今、ベイリー、ダコタと一緒に3人が、このユニットがブレークすること、WWE女子部門を席巻していこうというのが目標です。CATC大会の何が楽しみかって3人がそろって試合するところです。私たちは3人で秘密特訓しています。新しく秘密特訓の成果をみせられると思いますので、CATC大会を楽しみにしていただければと思います」
(おわり)【取材・構成=藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)
◆中継 WWEクラッシュ・アット・ザ・キャッスル大会は日本時間9月4日午前にWWEネットワークでライブ配信