WBC世界バンタム級王者山中慎介(32=帝拳)が「もぐらたたき」戦法で難敵を打ち破る。前WBA同級スーパー王者アンセルモ・モレノ(30=パナマ)との9度目の防衛戦(22日、東京・大田区総合体育館)の調印式が20日、都内のホテルで行われた。頭を下げる変則的な防御スタイルの挑戦者に深追いは厳禁。しびれを切らして頭を上げてくるタイミングで的確に攻撃を仕掛けていく。王者らしいゆとりの戦いで、勝負どころでは豪快な左をたたき込む。

 調印書にサインした山中は晴れやかな表情で言った。「気合も入っている。自分がバンタム級でトップだと思われる試合をする」。モレノと向き合うと、会場の緊張感は一気に高まった。「いい目をしていた。闘争心むき出しというより、落ち着いた感じ」。短く印象を語り、最終調整のため足早にジムに向かった。

 難敵攻略のキーワードは「もぐらたたき」だ。モレノは自身の強みを「パンチを当てさせないこと」と言い切る。後ろ足体重の独特の構えで、低く下げた頭を縦横無尽に動かしながらパンチを避け、不用意に打ってきたところに的確なカウンターを合わせてくる。

 山中とタッグを組む大和心トレーナーは、このモレノの必勝パターンを警戒。その上で「こっちは王者だし、無理に追いかける必要はない。頭を下げたままでは攻撃はできない。もぐらたたきみたいに、上がってきたところを打つことだけを考えていればいい」と説明した。

 KOを量産してきた山中も、苦戦は想定内だ。それでも「簡単に当たる相手ではないが、当たれば倒せる」と力を込めた。勝負どころは必ずくる。冷静に試合を進め、温存した大砲でとどめを刺す。【奥山将志】