“突っ張りジャブ”で偉業に並ぶ。ボクシングのWBC世界バンタム級王者山中慎介(34=帝拳)は13日、京都市内で13度目の防衛戦(15日、島津アリーナ京都)の調印式と会見に出席。具志堅用高に並ぶ世界戦連続防衛の日本記録を前に、早期KO決着を予見した。挑戦者の同級1位ルイス・ネリ(22=メキシコ)対策に用意したのは、体を押すジャブ。至近距離に迫る相手とのスペースを作り、「神の左」の一撃につなげる。

 「後半型」の山中には珍しい予告だった。「しっかり目を離さずに、1回から見ておいて下さい」。その直前に4年前を振り返った。13年、同じ8月開催だったV4戦。ニエベスに1回2分40秒KO勝ちした真夏の衝撃を思い起こし、「そういうことがまたあるかも」と滑らかに口にした。

 序盤に勝負に出るタイプではない。世界戦9度のKOのうち8度は7回以降の後半決着で、例外はニエベス戦のみ。それでも当人が予感するのは、「お互いのパンチが当たるスタイル」だから。連打で前進してくる勇猛なネリ。「神の左」を恐れずに踏み込んでくる。ポイント争いではない倒し合いの気配が色濃い。

 迎撃する武器は用意した。新たな右ジャブ。いなす、はたく、隠すなど多彩な打ち方を仕込んできたが、今回は「押す」。手のひらではなく甲を使うが、相撲の突っ張りのように左胸を押す。至近距離に入りたいネリを押し、空間を作り、左を見舞う。大和トレーナーは「押して体勢を崩し、立て直そうとしてきたところを打つ」と策を説く。

 節目の防衛戦にWBCも動いた。スレイマン会長は「勝利を飾った場合、記念の特製チャンピオンベルトを贈呈いたします」とコメントを寄せた。保持する米専門誌「リング」のベルトも合わせ、勝てば3本のベルトが手中に。「すごくモチベーションになりますね」。押して、殴り、たぐり寄せる。【阿部健吾】