【カーソン(米カリフォルニア州)7日(日本時間8日)=奥山将志】WBO世界スーパーフライ級王者井上尚弥(24=大橋)が、日本式「勝利の儀式」で米国デビュー戦へスイッチを入れた。9日(同10日)の6度目の防衛戦に向け、市内のホテルで行われた公式会見に臨み、挑戦者の同級7位アントニオ・ニエベス(30=米国)と対面。本場でのアピールに自信をみせた。

 正午からの会見が始まる2時間前。井上の元に神奈川・座間市内の自宅に忘れてきたチャンピオンベルトが届けられた。日本を出発した3日、成田空港で荷物の最終チェックをしている時に、ベルトがないことが発覚。後から合流する関係者に持って来てもらい、どうにか米デビュー戦での失態は回避した。

 常習犯で知られる王者は、ほっと胸をなで下ろす陣営をよそに「ついつい」とけろり。200人近い報道陣、関係者が詰めかけた会見でも堂々とあいさつし、強心臓ぶりを見せつけた。「そのベルトを米国に置いて帰ってもらう」と挑発してきたニエベスとは20秒間のにらみ合いを展開。「相手も調子が良さそう。スイッチが入った」と、一気に戦闘モードに切り替わった。

 14戦目で迎えた米初陣も、これまで通りの調整を貫く。会見後にはスーパーマーケットを訪れ、いつもと同じように計量後に備えて大量の食材を購入。「減量中の一番の楽しみ」と、ペットボトル飲料を30本以上、餅、うどん、肉などを次々とカートに詰め込んだ。また、日本で髪を切ってもらっている知人の美容師が、応援のためこの日到着。試合前恒例のカットをしてもらい、「お披露目」に向けた身だしなみも整えた。

 プロ8戦目で2階級制覇を達成した日本の才能には本場の関係者も熱視線を送る。興行を主催するK2プロモーションを率いるトム・ロフラー氏は「みんながイノウエの試合を見るのを楽しみに待っていた。ゴロフキンやタイソンのようなKOボクサーで、これからレジェンドになりうる存在だ」と期待を込めた。

 真価が問われる舞台。ゴングが迫り、騒がしさを増す周囲に対し、「ファンの度肝を抜くような試合をしたい」と井上。一発回答で期待に応えてみせる。