WBA王者田口良一(31=ワタナベ)が2団体王座の統一に成功した。IBF王者ミラン・メリンド(29=フィリピン)との世界王者対決。突進力のあるメリンドを左ジャブで抑え、両者バッティングによる流血戦の中で終盤に右ショートパンチや左フックを相手顔面にねじ込み、3-0の判定勝利。WBA王座の7度目防衛も成功させた。17年のボクシング界「大トリ」役を果たし、18年は日本選手で初となる2団体統一王座の防衛戦に臨む構えだ。

 血染めのグローブで、追い詰めた。3回に左目、5回には右目をカットしたメリンドに対し、田口も9回に左側頭部を切った。いずれも偶然のバッティング。10回開始前、セコンドの石原トレーナーから「いかなきゃ負けるぞ」とのゲキを受けると「気持ちで負けられない」と前に出た。4キロのハンマーをふり下ろす練習で鍛えた背筋を生かした強烈なパンチをIBF王者の顔面に、肉体にねじ込んだ。試合終了ゴングと同時に右拳を突き上げ、勝利を確信した。

 国内では2例目となる世界王者同士による団体統一戦を制した。WBAとIBFのベルトを両肩にかけ「疲れているのでメッチャ重い。うれしい悲鳴です」と安堵(あんど)の笑み。ジム先輩の元WBA世界スーパーフェザー級王者内山高志氏も解説席で見守るリングで「内山さんの引退後、自分が引き継いでワタナベジムを引っ張っていきたい」。内山氏に続き、年末の大トリ役を果たし、控えめに胸を張った。

 大舞台に向け、親の助けを求めた。4月から実家近くのマンションで1人暮らしを始めたものの、過去の世界戦前や当日に体調を崩した苦い思い出がある。団体統一戦に向けた厳しい練習に専念するため、再び実家に転がり込んだ。父勝良さんに材料を指定した食事の用意を依頼。「しょうが、小松菜、レンコンやめかぶや納豆とかリクエストして作ってもらった。いいペースで減量できました」とサポートを感謝した。

 井岡一翔、高山勝成に続く日本選手3人目の2団体統一王者となった。井岡、高山はいずれも1つの王座を返上。「やってみたい」と、18年は日本初の統一王者として防衛戦に意欲をみせた。7度目の防衛成功は歴代8位。「来年はもっと強くなりたい」。田口が強い王者ロードを突き進む。【藤中栄二】