WBA王者田口良一(31=ワタナベ)がIBF王者ミラン・メリンド(29=フィリピン)との世界王者対決を3-0判定で制し、2団体王座の統一に成功した。

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 田口は作戦通りの戦い方を見事に実践した。メリンドは八重樫を初回KOして正規王者になったように前半はすごく強い。だが後半になるとガクンとペースが落ちる傾向がある。今回、田口は序盤に強引な打ち合いを避け、左ジャブを多用して後半に勝負をかけた。それが功を奏した。その作戦を成功させたのが左ジャブ。ノーモーションから繰り出されるジャブが実に効果的で、メリンドの前進を止め、ポイントにつなげた。

 彼には個人的な思い出がある。日本ランカーだった頃、私のジムの当時高校生だった井上尚弥にスパーリングで倒された。しかし、後に日本王者になった田口は、鳴り物入りでプロ入りした井上の挑戦を受けてくれた。判定で王座を失ったが、最後まで倒れずに打ち合った。あの試合から彼のボクシングは変わった。自信がみなぎるようになった。その後、私のジムに出稽古にきて井上とスパーリングを積んだ。その強いハートと向上心が彼を別人に成長させたのだと思う。さらに長期政権を築くだろう。

 木村と五十嵐の一戦は魂のぶつかり合い。木村はサウスポーをよく研究しており、フルスイングしてもスタミナが切れなかった。リスク承知で打ち合った五十嵐もすべてを出し切った。こんな試合をすればボクシング界も盛り上がると思う。(元WBC、WBA世界ミニマム級王者)