WBA世界ミドル級王者村田諒太(32=帝拳)が初防衛に成功した。同級6位エマヌエーレ・ブランダムラ(38=イタリア)と対戦。開始から得意の右ストレート中心の連打を決め、優位に立つ。8回TKO勝利。日本人の同級王座の防衛成功は初となった。

 村田 (王者として)今回は見られる立場だった。気が引き締まった。より自分と向き合う時間が多かった。(今後は世界同級3団体統一王者の)ゴロフキンを目指してやっていきたい。

 飽くなき探求心が世界王者となった後も村田を成長させていた。1月に沖縄で1週間行ったフィジカル強化の合宿。中村トレーナーにリクエストしたのは「ラウンド中のしんどくてという状態に似通った疲れがほしい」。これまであまりやってこなかったメニューを依頼した。

 これまで取り組んできた内容の1つに、重いトレーニング用そり(スレッド)を一気に押すメニューがある。「ほぼ無呼吸の状態で30秒くらいやるんですが、普通人間は息を吸って平衡を保っているんですけどそれが崩れるんです。酸素負債といって、借金なんですよ。本来息をしてないといけない時の借金状態。その負債を抱えたのを、押し終わった後に、はー、はー、と返す。その時に一気に心拍数が上がる。トレーニング中、やっている中に息が上がるかというと、そうではないんです」。その状態はボクシングで言えばラッシュをかける疲れに似ているが、それでは不十分と感じていた。

 そこで新メニューを求めた。「後で返すのではなく、やっている最中にしんどいもの」。用意されたのは2キロ以上長く続く坂道を走り続ける、それを3セット。沖縄の海を背景にしながら、肩で激しく息をしながら駆け上がる姿があった。「しんど!」と走り終わった後に叫びながら、また新たなチャレンジに充実感に浸った。さらに上を、その上を目指し続ける姿勢。坂道を登るように向上を目指し続ける心が、偉業を支えた。