プロボクシング元WBC世界スーパーフェザー級王者で、秋田・三種町出身の三浦隆司氏(33)が、故郷とボクシングへの恩返しを誓った。昨年7月に引退後、第2の人生を模索していたが、今年4月に同県体育協会の「テクニカルアドバイザー」に就任。すでに県内の小学生から高校生に対し、世界を経験した技術や精神面、練習方法などを伝え始めている。夢はボクシング普及と、教え子を世界王者に育てることだ。

 世界が認め「ボンバーレフト」と呼ばれたハードパンチャーに、今度は後継者育成のゴングが鳴った。異色の転身で大役を担った三浦氏は、母校の金足農、西目、秋田工の各校ボクシング部に出向いて毎週指導。金曜日には県内の小中学生を1カ所に集めてボクシング教室を開き、競技の楽しさを伝えている。

 三浦氏 正直、こんな良い話をいただけるなんて考えてもいなかった。引退した後もボクシングに携われることがうれしいし、仕事になるなんて幸せ者です。ボクシングに出会えたのも秋田ですし、故郷のボクシング界を盛り上げることができればいい。とても充実しています。

 昨年1月、ミゲル・ローマン(メキシコ)との世界王座決定戦でKOしたパンチは全米で中継され衝撃を与えた。左拳を弓矢のように引いて、足も引き、大きなモーションで相手腹部に突き刺した。だが、導くのは“ボンバースタイル”ではなく、1人1人にあった形や練習法の確立だ。パンチに一番力が入る体勢も違う。筋力トレーニングも適性に個人差がある。

 三浦氏 みんな知らないことがたくさんあるし、その分、成長する容量が大きい。若くて輝いているし、教えがいがある。何のためにやるのかをしっかり伝えなくてはいけない。高校生はしっかりとした打ち方や、連動したパンチを教えたいし、小中学生にも楽しさだけでなく、厳しさも知ってもらいたい。

 07年には5校50人いた県内の部員は、現在4校で30人弱まで激減。秋田からボクシング人口を増やす使命も担う。11日には高校総体中央支部大会で教え子たちが“デビュー”するのも心待ちにしている。

 三浦氏 自分が指導して最初の大会なのでケガなく終わること。次の目標を見つける試合にしてほしい。その次には県トップになって東北大会。いずれは全国出場、そして優勝。大学で活躍したり、プロになって世界に羽ばたいてくれれば最高。

 元世界王者の、新たな挑戦が始まった。【鎌田直秀】

 ◆三浦隆司(みうら・たかし)1984年(昭59)5月14日、秋田・三種町生まれ。金足農時代には国体優勝。横浜光ジムに所属し、03年7月プロデビュー。11年1月、内山高志戦で世界初挑戦。同年に帝拳ジムへ移籍。13年4月にWBC世界スーパーフェザー級王座を獲得し、4度防衛。昨年7月、ミゲール・ベルチェルト(メキシコ)に敗れて同級王座返り咲きに失敗し、現役引退を表明。プロ37戦31勝(24KO)2分け4敗。169センチ。左ファイター。家族は八竜中同級生の彩美夫人と1男1女。愛称はボンバーレフト。