KOPW2021争奪戦は挑戦者の矢野通(43)がチェーズ・オーエンズに勝利し、今年7月以来の保持者となった。

マイクを使用して相手に「I Quit(ギブアップ)」と言わせた場合のみ決着が付くルール。大会前のファン投票で、矢野の案が採用されていた。反則裁定なしのため、スチールのごみ箱、ラダー、テーブル、テキサスストラップ、手錠などさまざまな“凶器”が飛び出した。

ヒールユニット「G.B.H」時代のように髪を金色に染め、気合を入れて臨んだ矢野は終盤、場外の鉄柵に手錠でつながれたが、テーピングの下にカギを仕込んでおり、脱出に成功。その後、逆にオーエンズに手錠をかけると、最後は、はさみを持ち出し、突きつけて降伏させた。矢野は「それくらいの肝っ玉で、俺にけんか売ろうなんて、100万年、いや100億年早いんだよバカヤロー」と笑顔。オーエンズは「頭おかしいのか、目玉を取られる所だった」とうなだれた。

このタイトルとトロフィーへの思いは強い。昨年KOPW2020保持者として終え、21年1月の大会でも21選手による時間差バトルロイヤルを制し、初代保持者となった。その後は登場のたびにトロフィーを壊され号泣する場面もあったほど。4月の「暗闇創造黒頭巾マッチ」では勝利したものの、前哨戦では毎回暗転後に襲われ、夜も眠れないほど苦しんだ。7月の時間差バトルロイヤルではラストに登場するも、失格になったはずの高橋裕二郎に攻撃され、オーエンズに優勝をさわられていただけに、喜びは格別だった。

反則技を使いながら、使われながら…。ヒール時代に戻ったように暴れ回った矢野は、大好きなトロフィーを手に悠々と花道を後にした。【松熊洋介】