イホ・デ・ドクトル・ワグナーJr.とのGHCヘビー級王座戦を控えたプロレスリング・ノアのジェイク・リー(35)は、王座を取り戻した後、どのような展開を望んでいるのか。

-ベルトを取り戻したら、今後の展望はどうなりそう

ジェイク 3月2日に名古屋で藤田(和之)選手とシングルをやって、改めて気づかされたことが多かったんですよね。やっぱりプロレスの根源は戦いだって。戦いの中でそういったものを言われ、殴られ、決められ、投げられ、そしてこっちもやり返してっていう。時代に逆行してますよね(笑い)。大きい団体の選手たちがやっている今のプロレスリングとはまたちょっと違ったものだったんです。けどそれが自分の中ではすごく刺激的で。改めてプロレスって戦いなんだよな。当たり前だよな、って気づかされて。

-試合開始直前には、ジェイク選手が入場時に着用しているコートの中に、藤田選手が口に含んだ赤まむしドリンクを吐き出すという挑発も受けた

ジェイク ふざけんなと思いましたけど「冷静であれ」って。あそこで怒ったら、私はただ単に普通のプレーヤーと変わらなくなってしまうので。ジェイク・リーがジェイク・リーたるゆえんは、そういう(相手に気持ちを乱されない)ところでもあると思っているので。「動じないよ、そんなことじゃ」って。

-藤田選手がジェイク選手を試したのでは

ジェイク ありましたね。戦いの中でもそれはたくさんありました。違う私を呼び覚ました。あの試合は私の中で、やはりプロレスって面白いなって。もっといろんな選手と試合したいなっていう気持ちが再燃した試合でした。

-31日にはメキシコ人のGHC王者との試合が待っている

ジェイク ルチャドール(メキシコのプロレス「ルチャリブレ」におけるプロレスラーのこと)とのタイトルマッチですよ。こんなの誰が想像してたんだろうっていうような、私自身も多分自分のプロレスのキャリアの中で、そういうことがあり得るとは想像してなかったかもしれない。だから、もっともっといろんな選手と試合がしたい。ベルトを持ったら、もっといろんな選手と防衛戦を重ねたいっていう気持ちは強いですね。

-いろんな選手と試合がしたいというジェイク選手が、実際に戦えるかどうかはさておき、気になるプロレスラーって

ジェイク 私のプロレス人生が大きく変わったのが、全日本プロレス時代の後楽園ホール還暦祭(22年4月16日、ジェイクは新日本プロレスのタイチとタッグを組み、新日本・棚橋弘至&全日本・宮原健斗組と対戦。結果は時間切れ引き分け)。そこでの棚橋選手とのマッチアップだったんですよ。あのとき試合をしてみて、絶対的なベビーフェイス(善玉役)ってこういうことを言うんだなって思ったんですよ。

-棚橋選手のどういうところが絶対的なベビーフェイスなのか

ジェイク 映像を見ても、カメラに抜かれてるのは棚橋選手なんですよ。私じゃない。そこにタイチ選手がいて、宮原選手がいて、という状況なんですけど、棚橋選手が抜かれる感がすごいわけですよ。それを映像で改めて見て、やっぱりこの世界ってすごいな、広いんだなと思ったんです。業界自体は狭いけど、いろんな選手がいるんだなって。すげえなって感じちゃったんですよね。特別なことをやっているわけじゃないんですけど、あそこまで全ての視線を持っていく。あれはすごいなって。

-まだまだ自分の知らない選手がいると

ジェイク 俺、まだまだ井の中の蛙(かわず)なんだって、すごく感じたわけですよ。その試合がきっかけで、もっといろんな選手やってみたいって思ったんです。だからやっぱり、気になる選手というか、やってみたいってなったらいまだに棚橋選手の名前を挙げてしまいますよね。

-棚橋選手から衝撃を受け、では自分はどういうふうになろうと考えたのか

ジェイク 棚橋選手が持っているものは、私にはないものが多かったんですよ。だからこそ、逆も思ったんです。棚橋選手にないものを私は持っているって。この体にしてもそうだし。この独特なリズムのしゃべり方も。これらを駆使した上で、全く違うジェイク・リーっていうものを作っていきたいなって。絶対的なベビーフェイスになりたいとかそういう気持ちはないし。私は純粋に今はレスリングを楽しんでいるし。その中で(自分を)作っていって。けど、最終的にどういうふうになるかっていうのは私自身も分かりません。(おわり)

◆ジェイク・リー 1989年(平元)1月19日、北海道・北見市生まれ。学生時代はウエートリフティングで活躍し、2011年にスカウトされて全日本プロレスに入団。デビュー戦は同年8月17日、登別市総合体育館での太陽ケア戦。精神的に行き詰まり、一時プロレスから離れた時期があったが、15年に全日本プロレスで復帰。22年いっぱいで全日本を退団し、23年元日のノア日本武道館大会に登場。ノアではグッド・ルッキング・ガイズ(GLG)を率いる。得意技はFBS、D4C、ジャイアントキリング。獲得タイトルはGHCヘビー級王座、3冠ヘビー級王座、世界タッグ王座、アジアタッグ王座。192センチ、110キロ。