4月29日に東京・有明アリーナで行われた「ONE SAMURAI 1」で宿敵ロッタン・ジットムアンノン(タイ)に5回TKO勝ちし、ONEフライ級キックボクシング暫定世界王座を獲得した“ナチュラルボーン・クラッシャー”武尊(34=team VASILEUS)が1日、都内で引退会見を行った。武尊はまず「先日の4月29日の試合をもちまして、僕は現役を引退することを決定しました」と改めて引退を明言。そして質問に答えた。以下、武尊の会見第1部の一問一答
-試合から2日経過しました。今日までどう過ごしてきたんでしょうか
「そうですね、全く寝ていなくて。試合の時のアドレナリン…試合の夜はいつも寝れないんですけど、今回は長くて。アドレナリンの出る量が過去一だったんじゃないかなっていうくらい。5ラウンドっていうのもあったし、相手がロッタン選手でもあったし、ああいう試合でもあったんで。いまだにアドレナリンが収まらず寝れてないですね。でも昨日はジムに行って、みんなに挨拶したりして。夜は奥さんと2人で久しぶりにご飯を食べに行きました」
-ジムの友人やご家族の方とはどのような会話をされたんでしょうか
「本当にみんなに『良かったね』『最高だったよ』って言ってもらって。でも本当に全部が理想通りっていうか、こうなればいいなと思ってやってきたんですけど、ほぼ全部その通りになって。こんなに出来すぎてるのも、夢なんじゃないかって。試合前もずっと、試合がこうだったらいいなとか、悪かったパターンもあるし。毎日のように試合の夢を見てうなされてたり。たまに(夢が)ちょっと良い結果だったなとか。っていうのを毎日考えてたんで。ちょっとウトウトして、起きたらまだ試合前なんじゃないかっていう感じ。まだ夢の中にいるような感覚なんで。まだちょっと実感がそこまで湧いてないんですけど。今そんな感じです」
-本当に武尊ストーリーの見事な完結だったと思うんですけども、KOした瞬間って、ご自身ではどんな気持ち、どんな感情が沸き上がってきましたか
「本当に必死すぎて、1ラウンドから。前回1ラウンドですぐ倒されて、過去ないくらい効かされて。その恐怖心もすごいあったし。何回も失神させられる夢とか、大けがする夢とか、すごい見て。過去一の緊張感っていうか、恐怖を感じてたんですけど、そのおかげですごい集中力を(出せて)。みんなにすごく動きが良かったとか、過去最高のパフォーマンスを見られたって言ってもらったんですけど、それは本当に前回の試合があったからだと思うし、それがあったからこそ、その恐怖を克服するために毎日、練習頑張れたし。だからこその当日の集中力だったのかなって思うし。なので1ラウンドから最後までずっと必死で、倒した瞬間も必死すぎて、それこそすぐに受け入れられないというか、よっしゃー! と思うんですけど、え、これ終わった? 勝ったってこと? チャンピオンってこと? みたいな。自分でも自問自答じゃないですけど、ちょっとプチパニックみたいになってましたね」
-試合映像は見返しましたか
「試合映像は見ました」
-試合のポイントはどのあたりが良かったですか
「本当に、すごい緊張感を持ってたっていうのが。恐怖…前回の試合はもちろんロッタン選手が強いって分かってたんですけど、ここまでの恐怖を持ってリングに上がってなかったんで。後輩にも言うんですけど、緊張って悪いもんじゃなくて、緊張とか恐怖を感じるっていうのは、それだけ自分を守ろうとしたり、自分のパフォーマンスを上げるための集中力に変わると思ってるんで。そういう意味ですごく今回はそこの集中力と感じる恐怖っていうのは過去一だったんじゃないかなっていう。そこが良かったポイントっていうか、良い結果につながったのかなって思います」
-試合前は緊張感や体の状態、不安な部分もあったと思うんですけど、そこから解放されてという話を聞こうかなと思ったんですけど、今はまだ完全に解放された感じではない?
「そうなんですよ。まだ緊張感も残ってて、それこそなんか気を抜いたら試合前に戻っちゃうんじゃないかみたいな。ほんともう、この試合が決まってから、前回の試合が終わった後にロッタン選手とやれるってなって、そこから毎日、恐怖と戦ってたし。その期間が長すぎて、それが体に染み付いちゃってて。ほんと1日、1~2時間くらいしか寝てないんですけど、ちょっとウトウトして起きたら、さっきまで試合勝ったんだなと思ってたのが、さっきのは夢で、まだ試合前なんじゃないかって心臓がバクバクしてきて。で、携帯とか見て、あ、もう試合終わってるわ、みたいな。あっ、チャンピオンになったんだ、っていうのを何回もやってますね、それを」
-試合後に奥様と抱擁するシーンが感動的だったんですけど、お2人の会話とかはされましたか
「その時はちょっと覚えてないですけど、一番最初に奥さんが言ってくれるのは、毎回なんですけど、本当に生きて帰ってきてくれてありがとうっていうのをいつも言ってくれます」
-最後、引退試合でしたけど、やっぱりあの日の自分が最強だったみたいな感じってありますか
「現役51戦プロでやって、一番恐怖心を持って試合に臨めた。体のコンディションだったりは、もっと良かった時はあったかもしれないし、練習量ももっとできてた時はあったと思うんですけど、過去最強で過去最高の自分を最後の試合で出せたかなと思います」
-現役生活の中で一番大変だったこと、つらかった時ってどんな時で、それはどうやって乗り越えられましたか
「どれか一つっていうのが決められないぐらいつらいことばっかりって言ったらちょっとあれですけど…つらいことたくさんあったなと思うんですけど。本当に最後にこういう形で終われて、いままでうらかったことも全部チャラになったというか。このためにあったんだなっていう。幸せを感じるときってたぶん、ずっと幸せになったら幸せって薄まっちゃうと思うんですけど、つらいことがあったからこそ最後の試合でこうやって勝てて、勝った時の喜びとか幸せがものすごいあるんで。今日のために今まで苦しかった日々はあったんだなって思ったら、その日々すらいとおしいっていうか。その日々にも感謝したいなって思いましたね」
-報われましたか
「いやー、もう報われすぎなんじゃないかっていうくらい、良かったなって思います」
-ロッタン選手が試合直前に少し契約問題があったというのは武尊選手も把握はされていらっしゃいましたか。それによって、もしかしたら試合がなくなるかもしれないみたいな不安とかを感じた瞬間はありましたか
「そうですね、それはありましたし、関係者からもそういう話があって、でも僕は4月29日に引退するって決めてたし、そこに照準を絞って、そこで体の限界ギリギリまでを作る準備をしてたんで。日程が変更になるとかは自分の中では選択肢がなくて。ロッタン選手とやれたら最高ですけど、ロッタン選手がもしできなかったら他の選手でも、その日にやろうっていうのは話してて。スーパーレック選手が体重落ちなかったとしても、ロッタン選手ができないんだったら、階級上げてでも最後スーパーレックと、みたいな話はしてました」
-ロッタン選手がリングを降りるときに泣いていたという映像はご覧になりましたか
「はい、見ました」
-2回戦って自分の最後の試合の相手を務めてくれたロッタン選手に何かかける言葉は
「最後の相手を務めてくれて感謝しかないし、契約のことでいろいろ大変なことがあったと思うし、あとは僕が前回KO負けしてて、一回KO勝ちしてる選手と戦うっていうのは、向こうにはメリットはないと思うし、それでも最後の相手を受けてくれたっていうのは、本当に感謝しかなくて。本当にありがとうという言葉しかないですね」

