<プロボクシング:WBC女子世界ミニフライ級タイトルマッチ10回戦>◇8日◇東京・後楽園ホール◇1300人

 WBC世界女子ミニフライ級3位の藤岡奈穂子(35=竹原&畑山)が、日本人最年長で世界王座を獲得した。同級王者アナベル・オルティス(24=メキシコ)を積極的に攻めて、2度のダウンを奪い、8回終了TKO勝ちした。35歳8カ月20日での世界王座初奪取は、男子を含めて日本人最高齢。東日本大震災で被災した故郷、宮城・大崎市へ激励の白星を送った。

 勝ち名乗りを受けた藤岡は、コーナーポストへ駆け上がり、両腕を突き上げた。祝福の拍手と歓声に、目頭に熱いものが込み上げる。「絶対に負けられなかった。もうこれ以上、みんなを沈んだ気持ちにさせられないと思っていました」。被災地にベルトを持ち帰ることができた。

 試合前、地元宮城・大崎市から駆けつけた母友子さん(59)から「宮城県のために頑張りなさい」と励まされた。気管と肺を患う母。震災直後から約1週間、停電のため酸素吸入器が自宅で使用できずに入院していた。この日、震災発生後初めて顔を合わせた。「仕留めてきます」とリングへ上がった。

 3度目の防衛を狙う王者に真っ向勝負を挑んだ。距離を取ってカウンターを狙う相手の懐へ、被弾を恐れずに飛び込んだ。5回、「1発だけでは倒せない」と左フックと右ストレートの連打でダウンを奪った。8回にはコーナーへ追い込んでからの右フックで、リングに沈めた。

 中学から実業団までソフトボールの内野手だった。「個人競技をやってみたい」と24歳でボクシングを始めた。03年にアマの世界大会(台湾)で銀メダル獲得。33歳でプロに転向して上京した。リフォームの会社に勤めながら夜間に練習。年齢的にも「ここで負けたら、その先は何も保障されていませんから」とラストチャンスのつもりだった。

 今日9日に震災後初めて郷里へ向かう。今週末から所属ジムのスタッフとともに宮城・登米市内で炊き出しを行う予定。「堂々と行けますね」。胸を張って笑顔で凱旋(がいせん)するつもりだ。【山下健二郎】