新十両の宇良(23=木瀬)は、異色の相撲を取る。173センチ、127キロの体で低く構え、時には一気に押し、時には足を取って揺さぶる。超個性派の新星は、いかに成長してきたのか。連載「低空の魔術師 新十両宇良」で、秘密に迫る。

 宇良の体格は173センチ、127キロ。関取では2番目に低く、4番目に軽い体を機敏に動かし、相手を惑わす。8年前の京都・鳥羽高入学時は152センチ、52キロ。男女40人のクラスで最も小さく、女子から「かわいい」と言われ「男として見られてない」と、口をとがらせることもあったという。

 それほどの“小兵”も、生まれた時は大きかった。「4020グラム。予定日より2週間遅れたから、でかくなったんかなあ」と、母信子さん(49)は懐かしむ。成長も早く、わずか6カ月で立って歩き周囲を驚かせた。「小さい足に合う靴がなかったです。滑り止めのイボがついた靴下とかを履かせて、道路を歩いていた」と信子さん。赤ちゃん時代の“スピード出世”は、親を困らせるほどだった。

 すくすく育った宇良と相撲との出会いは、偶然訪れた。信子さんは、気が強かった2つ上の姉美鈴さんが小学生になると、わんぱく相撲にエントリー。4歳の宇良も応援で行ったが、関係者に「出てもいいよ」と言われて急きょ参戦。終了後に遊具で腕を骨折するハプニングもあったが、痛みで泣きながらもらった敢闘賞のお菓子がうれしかった。寝屋川相撲連盟から「来週も来てや」と誘われ、家に帰ると母に「楽しかった」と明かした。相撲道の始まりだった。【木村有三】