昭和以降、最年長の再入幕となった西前頭13枚目の安美錦(39=伊勢ケ浜)が千代翔馬を上手出し投げで下して、最後の最後に勝ち越しを決めた。

 新入幕だった00年名古屋場所以来、103場所ぶりとなる2度目の敢闘賞も獲得。連れて行かれたNHKのインタビュー室では声を震わせて「毎日毎日、やるしかないと思って頑張りました。幕内で通用するか、しないかという不安もいっぱいあったし、家族も一緒に戦っている。いつもと変わらず接してくれて、気を使わせて…。今日はみんなで喜びたいですね」と、涙ながらに語った。

 珍しい光景だった。「負けて泣くことはあっても、勝って泣くことはなかった」という涙のインタビュー。涙腺を崩壊させたのは、懸命に支えてくれる家族の姿を思い浮かべたからだった。

 左アキレス腱(けん)を断裂し、十両に転落。一時は幕下まで落ちかけた。そこからはい上がってたどり着いた幕内の土俵。「家族とともにここを目指して、前半は良かったが、後半は幕内の厳しさが出てきて、家族も心配していた。それでも、いつもと変わらずに接してくれて、それに応えたいという思いが、こらえきれなくなって出てきちゃった」と明かした。

 久しぶりの敢闘賞も手にした。「情けをかけてもらったみたいで、申し訳ないね」と謙遜したが「ありがたいです」。来年に向けて「まだまだ。もっと稽古しないと厳しいと思うので、頑張ります」と誓った。