年寄荒磯を襲名した元横綱稀勢の里(32)が、両国国技館に“パニック”を起こした。

引退から一夜明けた初場所5日目の17日、八角理事長(元横綱北勝海)をはじめ、関係者へのあいさつのため来場。職務にあたる関係者のもとへ、正面出入り口や観客席を通って移動すると、ファンが黒山の人だかりをつくった。極力、多くの人と触れ合おうという配慮から、歩いて2階席に足を運ぶファンサービスで、土俵近くの観客の視線までくぎ付けにした。

まだ観客の少ない時間帯だったが、約1時間の滞在中は現役時代同様、国技館内を興奮のるつぼに陥れた。荒磯親方は「(ファンに)いつも支えてもらっていたから。2階席も、最近は1階席も行くことがなかったから、近くでああいう風にしてもらえてうれしかった」と笑顔で話した。

今後は田子ノ浦部屋の部屋付き親方として指導力が求められるが、この日は部屋の朝稽古に姿を見せなかった。部屋には「近いうちに行く」と、今場所中にもまわし姿で指導者デビューを計画。八角理事長は「これからの親方稼業の方が長い。弟子の育成は大変」と今後に期待する。「親方」という呼ばれ方については「間違って呼ばれていることが多いから」と、慣れるのも時間の問題だという。協会での親方の仕事は、2月9日のNHK福祉大相撲の館内警備などからになる見込みだ。【高田文太】