大相撲の大関貴景勝(23=千賀ノ浦)が引退した“先輩大関”に感謝の言葉を並べた。

1日、東京・両国国技館で行われた元関脇豪風、年寄押尾川の襲名披露大相撲に参加。28日に現役を引退し、年寄「武隈」を襲名した元大関豪栄道について「豪栄道関らしい辞め方。それだけしかない」と神妙な面持ちで話した。

貴景勝にとって豪栄道は埼玉栄高の先輩。「10個下の自分が軽はずみなことは言えないけど、本当に埼玉栄のみんながあこがれていた。みんなが豪栄道関みたいになりたいと目指していた」と、高校時代を回顧した。

数々の印象的な思い出がある。高1のときには、すでに三役として活躍していた豪栄道に、同校の稽古場で胸を出してもらった。

「(厳しい稽古で)死ぬかと思ったし、めっちゃきつかったけど、うれしかった。『沢井(豪栄道の本名)先輩に胸を出してもらった』と」

若い衆だった時代にも、各段優勝した際に声をかけてもらったことがある。歴代10位の大関在位33場所を誇る豪栄道の人物像を「器が大きい。男らしい人」と簡潔に表現した。

初めての大関とりでは、壁として立ちはだかっていた存在だった。勝てば大関昇進を手中に収める昨年1月の初場所千秋楽。豪栄道に立ち合いから一気の出足で押し出され、完敗を喫した。当時の苦い経験は「ありがたかった」と貴景勝。「大関としての力はこうと教えてくれた。歯が立たなかった。身をもって教えてくれた」。

昨年大関昇進を決めた春場所(3月8日初日、エディオンアリーナ大阪)は、豪栄道の陥落、引退により、貴景勝が38年ぶりの1人大関となる。2度目の優勝へ。「ますます求められるものは高い。しっかり、一生懸命やらなければ」と、気を引き締めていた。