現役最年長関取で西前頭11枚目の琴奨菊(36=佐渡ケ嶽)が5日、初の角界ドキュメンタリー映画「相撲道~サムライを継ぐ者たち~」(10月30日から公開)の鑑賞を、相撲ファンに熱望した。

この日、千葉・松戸市内にある部屋で秋場所(13日初日、東京・両国国技館)に向けた稽古で汗を流した後、報道陣の電話取材に対応。ひと通り、近況などを話した後、最後に自ら「あと個人的にひと言、いいですか?」と切り出し、話したのが、前述のドキュメンタリー映画のこと。「相撲ファンの方に向けて、すごくアピールになると思う。そういう生きざまで力士が頑張っているというのが伝わると思うし、そちら(映画)も見て大相撲を見たら、もっとファン層が広がると思う。目に見えているものより、もっと陰で頑張っているんだよ、というところが力士の尊さじゃないけど、あるべき姿だと思う」と熱弁をふるった。秋場所も各日、上限約2500人の有観客で開催されるが「ひたむきに頑張る姿をみてほしい」と最年長関取らしく、全力士の声を代弁するように語った。

5人の関取衆を含め角界最多37人の力士を抱える大所帯の佐渡ケ嶽部屋。もともと出稽古禁止の影響は受けておらず「総合的にバランスが取れている琴恵光、柔軟さがある琴ノ若、フィジカルがすごくいい琴勝峰、押しの形がしっかりしている琴勇輝。いろいろなタイプがいるから、すごくいいと思う」と充実の稽古を重ねて本場所を迎える。

気分転換も可能な範囲で図っている。先場所後は師匠(元関脇琴ノ若)の許可をもらい神奈川・湯河原温泉に足を運び「行けたことが活力になるかなという感じ」とリフレッシュした。

幕内勝利数は現役2位で歴代6位の716勝。断トツの白鵬(1076勝)や2位の元大関魁皇(879勝=現浅香山親方)ら、そうそうたる顔触れが上位に控える。「すごいことですよね、本当に。そこに挑戦できるのは昔の教えと、稽古と、いろいろな環境があったから。そこをもう1度、思い出しながらやっていきたい」と独特の言い回しで前向きな姿勢を示した。7月場所では8場所ぶりに勝ち越し。まだまだ白星を積み重ねる。

周囲から刺激ももらった。やはり大関経験者の照ノ富士が先場所、復活優勝したことには「俺も、まだまだ出来るぞという気持ちを持って」。一回り年下の大関貴景勝の婚約には「うはははっ…。喜ばしいことで、何にも言えない」と笑いながら「幸せも本当に多くなると思う」と“人生の先輩”らしく話した。