角界に激震が走った。日本相撲協会は5日、横綱白鵬(35=宮城野)が新型コロナウイルスに感染したことを発表した。入院措置となり、初場所(10日初日、東京・両国国技館)出場は絶望的な状況。三役以上では初の感染となった。菅義偉首相は1都3県を対象とした緊急事態宣言の再発令について、7日に決定する方針を表明。観客の上限を約5000人として開催を目指す初場所に向けて、危機感が高まりそうだ。

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協会によると白鵬は3日に嗅覚異常の症状を訴え、4日にPCR検査を受けて5日朝に陽性と確認された。発熱などの症状はないが、電話取材に応じた芝田山広報部長(元横綱大乃国)によると、保健所の指導のもと入院した。

懸念されるのが、部屋での集団感染だ。4日まで白鵬も都内の部屋で稽古を行っていたが、5日時点で白鵬以外に症状を訴えている部屋関係者はいないという。同部屋には十両石浦、炎鵬ら力士16人が所属。協会は念のため、同日に先行して師匠の宮城野親方(元前頭竹葉山)ら部屋関係者全員を対象にPCR検査を行った。「結果が出ても今日(5日)夜遅いんじゃないか」と同広報部長。所属力士の初場所出場は、現状では不透明とした。

史上最多44度の優勝を誇る白鵬は、昨年11月場所後に横綱審議委員会(横審)から史上初の「注意」の決議を下され、初場所は再起を懸ける場所だった。

右膝の負傷などを理由に、昨年11月場所まで3場所連続で休場していたが、昨年12月には両国国技館内の相撲教習所で行われた合同稽古に参加。貴景勝、朝乃山の2大関と三番稽古を行うなど計4日間で63番取って順調な調整ぶりを印象づけていた。同月23日には綱打ちを行い「まずはけがをしない体作りをしながら走りたい。その走る中で結果を出していきたい。もちろん若手の壁になりつつ」と意気込んでいたが、思わぬかたちで出場への道が閉ざされた。

角界では年明けに、荒汐部屋で前頭若隆景ら12人の集団感染が判明したばかりだった。菅首相は5日、1都3県が対象の緊急事態宣言を再び発令する方針を表明した。早ければ7日にも発出する。協会は昨年、緊急事態宣言の延長に伴い5月の夏場所を中止したが、前日4日時点で芝田山広報部長は「(初場所は)今のところ中止とか無観客とかそういうようなことは何もない」と説明。現状では開催を変更する方針を示していない。

協会は政府の方針を待ちながら、必要によっては臨時理事会を開いて対応を協議する。初日まで残り4日。看板力士の感染を機にさらに警戒心を強め、通常開催の可能性を探っていく。

◆白鵬の立場 昨年5場所で皆勤した場所は、優勝した春場所だけ。3場所連続休場となった11月場所後には、横綱審議委員会(横審)で横綱鶴竜とともに史上初の「注意」の決議を受けた。休場日数の多さを指摘する横審の矢野弘典委員長は「来場所にはぜひ覚悟を決めて備えていただきたい」と、進退を懸ける覚悟を求めていた。

◆新型コロナウイルス禍の角界の主な動き

▽20年3月1日 日本相撲協会は臨時理事会を開き、春場所の史上初の無観客開催を決定。

▽同22日 感染者を出さず春場所千秋楽を迎える。

▽4月3日 夏場所と名古屋場所開催の2週間延期を決定。

▽同10日 三段目力士の勝武士さんが感染。角界では初。

▽同25日 高田川部屋で力士ら6人の感染が判明。

▽5月4日 夏場所中止が決定。名古屋場所の会場を東京に変更し「7月場所」として開催する方針を示す。

▽同13日 勝武士さんが新型コロナ感染による多臓器不全で28歳で死去。

▽7月13日 7月場所の開催を正式決定。1日あたりの観客数の上限を2500人に設定。

▽9月10日 協会は玉ノ井部屋の力士18人の新型コロナ感染を発表。

▽10月19日 協会は11月場所の観客数の上限を約5000人に引き上げることを発表。

▽12月11日 立浪部屋で平幕の天空海ら力士10人の集団感染が判明。

▽21年1月1日 荒汐部屋で平幕の若隆景ら計12人の感染が判明。