14日目に2場所連続6度目の優勝を決めた横綱照ノ富士(29=伊勢ケ浜)が、初の全勝で花を添えた。大関貴景勝の馬力を真っ向から受け止めて押し出し、1年納めの場所を締めくくった。全勝優勝は今年7月の名古屋場所の白鵬以来で、優勝制度ができた1909年(明治42)以降、史上40人目。平成以降では武蔵丸、貴ノ花、朝青龍、白鵬、日馬富士、豪栄道に続いて7人目となった。

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照ノ富士が20代最後の日を全勝優勝で飾った。29日が30歳の誕生日。表彰式の優勝インタビューで触れられると「なりますね」と照れ笑いを浮かべた。つり屋根に下がった今場所初の「満員御礼」の垂れ幕。収容人数の半分にあたる、上限いっぱいの約3700人の観客から温かい拍手で祝福された。

「理想」に近い相撲だった。貴景勝の突き押しを192センチ、184キロの体で真っ向から迎えた。「自分はそんなに才能のある力士じゃない。いろんなことできる力士じゃない。でかい体を正面にぶつけて受け止めてやっていくだけだった」。いなし、はたきを一切使わず、常に正対して押し切った。「昔からこの相撲を理想にずっと稽古して頑張ってきた。少しずつ理想の相撲になりつつある」。納得の一番で締めた。

早くも22年を見据えている。「大きく目標を立てて2桁優勝を目指して頑張っていきたい」。2桁優勝は過去に14人。今年と同じ年間4度の優勝で到達する。「そう簡単にいくことではないので自分なりに頑張っていきたい」。先場所限りで白鵬が去った相撲界。在位2場所の横綱は記録ずくめとなる30代の相撲人生を描いている。【佐藤礼征】

▽伊勢ケ浜審判部長(元横綱旭富士) 照ノ富士は今場所も横綱の責任を果たしてくれた。全然慌てず、落ち着いていたのがいい。1年納めの場所で、久しぶりの九州で、みんないい相撲を取っていた。今場所みたいに気合が入った相撲をみんなが取り続ければいい。