大相撲夏場所(5月8日初日、東京・両国国技館)まで10日を切った29日、大関正代(30=時津風)が報道陣の電話取材に応じ、近況や夏場所に臨む胸中などを明かした。

この日の朝稽古は幕内の豊山(28)に幕下上位を交えて20番ほど取った。25日の番付発表までは若い衆と、その後から豊山と相撲を取る稽古を再開。本場所までの調整の手応えについては「まだ何とも言えません」と話した。

大関在位10場所目。3度目のかど番で臨んだ3月の春場所は、6日目まで1勝5敗と大関陥落のピンチに陥った。2月に新型コロナウイルスに感染し、後遺症などから調整が遅れたことが響いた。「精神的にも良くない場所」(正代)も、7日目からは人が変わったように8勝1敗。「(5日目に)初日が出てから体の動きが変わった」と見違える相撲で、優勝決定戦を争った高安を14日目に、そして関脇若隆景を千秋楽に破り一躍、優勝争いのキーマンに浮上した。「他の場所より、すごく脱力感があって休まることはなかった。余裕がなかったですね」と冷や汗ものだったが、今にして思えば「いい経験になったとは思います」と振り返った。

「後半の動きは良かった。初日から、そうしないといけないんですけど」と再び振り返る春場所中は、周囲も気をもんだ。「だいぶ心配されました。『引退するの? 引退するんじゃないだろうな』って。冗談だとは思いますけど。もちろん『そんなつもりはないですよ』と」。ひと息付けた余裕からか、東洋大出身の若隆景の初優勝についても「(東農大出身の正代と同じ)大学出身力士ですから、優勝はうれしいというか、これで大学からの入門者も増えてほしいと思う」と素直に語る。

場所後の5月28日には、兄弟子だった部屋付き親方の井筒親方(元関脇豊ノ島)の引退相撲もある。「心配かけさせないように、自分(井筒親方)の断髪式に集中してもらえるようにしたい」と話し、そのためにも夏場所は「最近、優勝争いから遠ざかっているので参加したいですね」と誓った。