今、自分が持っている最大限の力で相手の出足を止める-。その一点に集中していた王鵬が8連勝で勝ち越しを決めました。

現状では立ち合いのスピード、強さで阿武咲に分があるのは明白です。だから王鵬は、絶対に当たり負けだけはするまいと一歩を踏み込みました。その後、下がりましたがそれも想定内だったでしょう。腰もドッシリ構え落ち着いて対応して逆転の突きに結びつけました。一瞬のことですが、左のおっつけも実は効いていて、あのまま持って行こうとした阿武咲の、二の矢の攻めも封じています。よく考えて取っています。

先場所までは雑な相撲が目につきましたが、今場所はそれが少なく、腰高にならず突っ張りが小さいのも好結果の要因になっています。豊昇龍とともに1敗で優勝争いの先頭に立ち、後半戦は上位と当たるはずです。ただ、優勝などは考えずに、まず立ち合いで当たることを忘れずに、今の自分の力がどれだけ上位に通じるかを体で覚えることが大切です。上位と当たる挑戦権を得るのだから、負けてもいいからいろいろな相撲を経験することで成長につなげてほしいですね。(日刊スポーツ評論家)