大相撲春場所で関脇霧馬山(26=陸奥)に本割、優勝決定戦と連敗し、21年初場所以来となる2度目の賜杯を逃した小結大栄翔(29=追手風)。実は昨春まで日大大学院の総合社会情報研究科に通っていたというインテリ力士だ。専攻は相撲部屋制度に通じる同族経営、ファミリービジネスについて。修士論文の指導に当たった加藤孝治教授によると論文は5万字近くに及ぶ大作で、次世代へ相撲文化を継承するための提言がまとめられていたという。

加藤教授によると、大栄翔は国内スポーツ界における大相撲を位置づけた上で、相撲部屋の経営手法や協会の制度的な課題を分析。日本人力士が減少傾向にある現状を憂い、大相撲の文化が活性化するために必要なことを提言していた。「特徴的なのは、自分が相撲と出会った時の経験を交えて論じたこと。若い人たちが相撲と触れ合う機会をどうやって作っていくかという問題意識が高かった」と目を見張る。

また、多忙な日々をやり繰りしながら、何事も真面目に取り組む姿が印象に残ったという。「20代後半という現役バリバリで活躍している時に大学院へ通った経験は大きな意義」。卒業した今でも、ゼミ生のグループラインなどで連絡を取り合い交流が続いている。

先場所10勝(西前頭筆頭)、今場所12勝(小結)した大栄翔。大関昇進の目安は「三役で3場所33勝」とされるだけに、5月の夏場所は霧馬山とともに大関とりのチャンスがある。勝負の来場所。加藤教授は「番付が上がることは彼の論文で書いたような将来像をしていく上でもつながっていくことだと思います」と期待を寄せ、今後の活躍も引き続き温かく見守っていく。【平山連】