かど番の大関貴景勝(26=常盤山)が気迫で最初の大ピンチを乗り越えた。

前日に続きテーピングを施した両膝への不安を抱えながら、翠富士を攻め続けて押し出した。最悪の連敗を阻止して節目の通算400勝を飾り、2勝1敗と白星を先行させた。大関とりの関脇霧馬山は阿炎に土俵際、引き落としを食らって初黒星。幕内に復帰の東前頭14枚目・朝乃山は軍配差し違えで3連勝を飾った。

ゆっくりと慎重に二字口に足をかけながら、土俵を下りる姿が痛々しい。貴景勝は前日2日目から両膝をテーピングで固めてきた。抱える不安、痛みはあるはずだが気迫で乗り越えた。

小兵の翠富士との一番。過去3戦3勝の好相性は「負けられない」重みを増した。立ち合いから攻めまくった。動かれてつかまりかけても徹底して突き放し、最後は押し出した。NHKの解説を務めた元小結の舞の海氏は「気迫に満ちた相撲でした」と感嘆した。

積み重ねてきた通算400勝の節目となった。しかし、9年前の初土俵からを振り返る余裕はない。琴ノ若に敗れた2日目の取組後、師匠の常盤山親方(元小結隆三杉)は「朝も稽古場に来て一生懸命、基礎を中心にやっている。僕らは見守るしかない。本人の精神力を…」と話していた。

恵まれているとは言えない体で、けがとの戦いが続く。今回が6度目のかど番となるが、そのうち5度は前場所の途中休場が絡む。「同じ精神を保ちたい」と場所中に取材に応じることはなくなり、状態や本音の部分は見えないままだ。

負けん気が支える。5歳から極真空手の道場に通った。当時の指導者が「あんな負けん気の強い子どもは初めてだった。とにかく勝負事に負けることが大嫌いだった」。ある大会で準優勝に終わった。(貴景勝の本名)佐藤少年は「判定がおかしい。判定がある競技はやらない」と白黒が明確な相撲に打ち込んだ。

まだ3日目。先にはまだ大きな山が控える。逆境への反骨心。それだけで越えていく。【実藤健一】

大相撲夏場所全取組結果