昭和以降最速タイ、所要3場所で新入幕の西前頭17枚目・伯桜鵬(19=宮城野)は、豊昇龍の上手投げに屈して優勝の夢は破れた。まだマゲも結えないザンバラ髪の19歳が旋風を起こしたのは事実。敢闘賞と技能賞をダブル受賞し、さらなる稽古への精進と飛躍を誓った。

ザンバラ髪にはべっとり砂がついた。「豊昇龍関の方が自分より強い。そういう結果です」と伯桜鵬は完敗を認めた。年少、スピード記録に新入幕109年ぶり。突破すれば大相撲史を塗り替える偉業に迫り、巨大な壁にはね返された。

鋼のメンタルの持ち主でも、さすがに経験の差は大きかった。仕切りの間は豊昇龍のにらみに1歩も引かずにらみ返した。しかし相撲は、いつもの下半身の強さがなかった。左四つで右からおっつけようとしたところ、豊昇龍の速い攻め。出ようとしたタイミングで投げを食らうと、右手を突き、さらに裏返された。

「正直、優勝を狙ったところはないが、豊昇龍関に勝つために準備してきた。それがすごく悔しい。自分の稽古不足しかない。もっと稽古していきます」

本音は優勝を意識しないわけにはいかないだろう。質問に応じる無表情には、悔しさがにじみ出ていた。

相手を徹底的に研究する。負けた時は「勝った時の倍(動画を)見る」という。新入幕の今場所は部屋付きの間垣親方(元幕内石浦)が対戦相手の特徴を伝えた。しかし、自分の肌で得たものの方が大きい。「この15日間を生かしたい」。怪物伝説はページが開けたばかりだ。【実藤健一】

【動画】豊昇龍が新入幕の伯桜鵬下し優勝決定戦へ 上手投げ決め気迫の表情