3度目の綱とりも中日を迎えずに終焉(しゅうえん)か。大関貴景勝(27=常盤山)が豪ノ山に寄り切られて2敗目を喫した。先場所優勝も11勝で今場所の横綱昇進には高いハードルが課せられている。全勝力士が消えて優勝の可能性は残されているが、悲願に向けては厳しい戦いが続く。大関豊昇龍は阿炎を送り出して1敗を死守した。

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悲願の綱とりを狙う大関に厳しい結果が突きつけられた。「負けたので。それだけでした」と貴景勝は淡々と振り返る。埼玉栄高の後輩で、同じ関西出身の豪ノ山に強烈な恩返しを食らった。

同じ突き押し相撲の相手に様子を見にいったような立ち合いだった。押し込むが攻めきれず、体勢を入れ替えられて寄り切られた。「負けた理由は必ずあるんで。まあ負けたんで、原因は必ずあると思う」。先場所の初対戦では完勝している。油断ではないが、隙を完全に突かれた。

全勝力士が早々と消え、2場所連続優勝の可能性は消えていない。しかし、先場所の優勝も11勝で、優勝決定戦で熱海富士相手の立ち合い変化で議論を生んだこともあり、綱とりには高いハードルが課される。2敗はまさにデッドライン。「初日からやってきたものがある。明日また、集中してやるだけです」と言ったが追い詰められた現実は揺るがない。

貴景勝にとって、横綱はまさに力士になってからの夢だ。「力士として頂点を目指さない人はいない。入門して番付を少しずつ上げて。でも、この世界では無理かなと怖さがほとんどだった」。身長175センチ。見上げるような相手ばかりの世界で命をかけて戦う。

可能性が失われたわけではない。場所前も「先場所と今場所は違う。すべて消し去ること。新しい自分に向き合いたい」と決意表明した。今場所も同じ。痛い2つの黒星は自分の中から消して、残り8日間の土俵に全集中する。【実藤健一】