[ 2014年6月25日8時15分

 紙面から ]後半30分、2点目のゴールに歓喜するメキシコ・エレラ監督(AP)<W杯:クロアチア1-3メキシコ>◇1次リーグA組◇23日◇レシフェ

 伏兵メキシコがクロアチアを下し、6大会連続の決勝トーナメント進出を決めた。ミゲル・エレラ監督(46)の采配がズバリ的中し、後半一気に3ゴール。強豪ブラジル、ドイツに続く記録を達成した。昨年10月に就任すると、W杯予選で敗退危機にあったチームをV字回復させた。愛嬌(あいきょう)ある体形と激しいオーバーアクションの裏で、今大会も冷静なベンチワークが光る。

 ドローでも突破が決まる一戦で、メキシコがちゅうちょなく得点を重ねた。後半27分、左CKをマルケスが頭で合わせ、均衡を破る。さらに30分、DFグアルダドが追加点を奪うと、エレラ監督はベンチ前で選手に抱きつき、勢いあまり一緒に倒れ込んだ。「この素晴らしい夜を楽しみたい。ベンチも含めた23人の選手が一体となっている」と喜びを爆発させた。

 敵の動きを逆手に取った。後半13分、クロアチアが左サイドバックのDFブルサリコに代えてMFコバチッチをトップ下へ。4バックから3バックにして前のめりに来た。するとエレラ監督は4分後、スピードのあるFWエルナンデスを投入。伝統的なショートパス戦術を捨て、シンプルなカウンター狙いの作戦に出ると、これが的中した。

 先制点は逆襲からサイドを突き、得たCKから。2点目は相手スローインを奪い、エルナンデスが右サイドを駆け上がったもの。3点目もカウンターからクリアミスを誘い、CKを最後はエルナンデスが決めた。

 エレラ監督は昨年10月の大陸間プレーオフ直前に就任した。北中米カリブ海予選で4位と苦戦したチームは1カ月半で3度目の監督交代だった。監督就任後、予選で機能不全となった4バックから3バックに変更。意思統一を優先し、メンバーを国内組主体にして立て直しを図った。

 オーバーアクションが注目されるが、相手のデータや傾向を緻密に分析して臨む「知将」。0-0だったブラジル戦は「ネイマールにスペースを与えるな」と事細かく指示した。1次リーグ全3試合の先発メンバーが同じで、欧州組のエルナンデスをスーパーサブとして待機させる徹底ぶり。長く代表から遠ざかっていたマルケスを主将に任命し、選手とのパイプ役にした。「今日はマルケスが大きかった。私の指示を濃縮し、仲間に広めてくれる。彼は選手に『ボス』と呼ばれる」と称賛した。

 メキシコはA組2位で、決勝トーナメント1回戦の相手は強豪オランダだ。それでもマルケスは「この勝利は歴史の始まりに過ぎない」。エレラ監督の手腕に、自国開催だった86年大会以来、四半世紀ぶりのベスト8進出の期待がかかる。

 ◆ミゲル・エレラ

 1968年3月18日、メキシコ・イダルゴ州生まれ。現役時代はDF。93年にメキシコ代表で南米選手権出場。00年に現役を引退し、02年にアトランテ(メキシコ)監督に就任。04年からモンテレイ(同)でリーグ2位などの好成績を収め、11年からアメリカ(同)を指揮し、現在は代表監督兼任。英デーリーメール紙によると年俸は約2200万円で、W杯出場国の監督の中で最下位という。

 ▼6大会連続1次リーグ突破

 メキシコが94年大会から6大会連続で決勝トーナメント(T)進出を決めた。現在6大会以上連続で1次リーグを突破している国は、メキシコの他にブラジルとドイツのみ。16強による決勝Tとなった86年大会以降のメキシコは、ユース年代の年齢詐称問題で失格となった90年大会を除く7大会で1次突破。