ここ数日でAKB48に1つのうねりが起き始めている。ツイッター上で、にわかに盛り上がってきているのは、「#AKB48単独シングル希望」というワード。それは、10日に、11月22日発売の通算50枚目のシングルの選抜メンバーが発表されることに由来する。

 渡辺麻友が最後のセンターを務めるシングルの選抜メンバーは、人数が多めの28人。このメンバー構成に、ファンから反論が起こっているのだ。

 物議を醸しているといっても、変わったことが起きたわけではない。むしろ、今までと、ほぼ代わり映えのない構成。そのいつまでも変わらない状況に、ついに反対意見の声が上がったということなのだ。

 AKBのシングルは、大ブレークをする直前から、実は純粋なAKBメンバーの楽曲ではなくなっていた。SKE48などの姉妹グループのメンバーも加わって、選抜メンバーが構成されてきた。それでも、当時は、姉妹グループもSKEだけ。9割は純AKBメンバーで構成できたので、大きな問題にはならなかった。

 ところが、現在のAKB48グループは、国内に6つに増えた。それぞれからメンバーを選ぶとなると、必然的に純AKBメンバーの選抜のイスは少なくなる。今作も、28人中AKBメンバーは半分以下の12人。もはや「AKB48シングル」ではなくて、「AKB48グループシングル」というわけだ。

 この状態で、最も弊害なのは、AKBメンバーの多くが選抜メンバーにはなれないということ。だから「Mステ」のようなテレビの音楽番組に出演できない。それは、いつまでたっても知名度アップや人気メンバーになることが難しいことを意味する。

 いまだに世間一般のAKBのイメージは、前田敦子や大島優子、板野友美ら元祖神セブンのままだ。それは、若手が育たない、人材不足というわけではなく、この構造上の問題が、一番影響しているのだ。

 もしも、AKB選抜に入るHKT48指原莉乃、NMB48山本彩、SKE48松井珠理奈らが外れたら、その分、生え抜きAKBメンバーにチャンスが回ってくるのだ。

 では、なぜ、AKB側は、実質的な“AKB48グループオールスター選抜”を、AKBシングルの選抜に据えるのだろうか。ギネス記録を更新し続ける「AKBシングルの連続ミリオンセールス」というメンツは、その理由の1つだろう。姉妹グループを巻き込むシングルだからこそ、AKB48は、全48グループが一同に介する日本一巨大な握手会を開催しているという側面もある。それに、生みの親の秋元康総合プロデューサーにとってみれば、「姉妹グループも含めたすべてが『AKB48』という一大プロジェクトなのだ」という部分もあるだろう。

 実際に、純AKBだけでシングルを発売したら、ミリオンセールスには届かないのは明らかだし、それはブランドイメージのダウンになる。なるべく避けたいと思うのも、商売上では分からなくはない。

 ただ、そこにこだわり続けることで、AKBファンが、姉妹グループや乃木坂46や欅坂46などの、ほかのアイドルグループに流れているのも現実。AKB48プロジェクトという巨木は、枝葉を多く増やしたが、かつて幹だった部分は空洞化してしまった。AKBメンバーは、どれだけ努力しても、トップアイドルへの狭き門に阻まれ続けて、いよいよ心が折れかかってきている。そんなよどんだ雰囲気に耐えられなくなったファンが、声を上げ始めたというわけなのだ。

 かくいうAKB48担当歴の長い私も、今日15日発売のAKB48グループ新聞9月号の編集後記で、この「AKB48選抜問題」について私見をつづった。多くの純AKBメンバーも、悲しみに沈む心境をSNSで吐露している。誰がどう見ても、現体制が限界に達したということなのだろう。

 さて、今後はどうなるのか。私は、年間4枚のシングルのうち、AKB48選抜総選挙の投票権付きシングルと、その総選挙結果を受けて上位16人が選抜メンバーとなるシングル(いわゆる総選挙選抜シングル)の2枚は、これまで通りに“AKB48グループ選抜”にしておいて、秋と春に発売の2枚は、純AKBメンバーで選抜を選ぶのが良いのではないかと、考えている。

 かの総選挙も、そもそもは、秋元康氏が選抜を決めるやり方に、ファンが「なぜ、私が応援する子を選ばないんだ。不公平だ」と反発の声を上げたことが、発端だった。秋元氏が「文句ばかり言われるので、ならばファンの皆さんにメンバーを選んでもらおう」と、開催に踏み切った。今回も、長らく未解決のままの問題だったが、この「#AKB48単独シングル希望」の声が広がり続けたら、変わるかもしれない。AKB48が大人気を獲得した理由は、ファンの意見が実現する、ファンの力で動かすことのできるアイドルグループだったからだ。

 今、AKB48は大きな選択を迫られている。