「クライマーズ」(ダニエル・リー監督、25日公開)は中国登山隊による60年、75年の2度のチョモランマ登頂を題材にしている。

60年は建国11年目、無謀とも言える3人の登山隊による快挙だった。が、撮影機材の紛失によって、世界には認められない。そして文化大革命による中断。不遇の15年を過ごした3人が再結集し、国を挙げての支援を受けた75年の登頂に臨むが、こちらもすさまじい突風や雪崩で難航する。

エベレスト(チョモランマ)を題材にした山岳映画は少なくないが、この作品に込められた熱量はすさまじい。国の威信をかけた登山隊同様に中国を代表するスタッフ、キャストが結集し、とにかく熱い。

「男たちの挽歌」(86年)などで知られるツイ・ハークがプロデューサーに名を連ねていることもあるからだろう、ザイルを絡めたアクションに他の追随を許さないスケール感がある。考えてみれば、中国お得意のワイヤ・アクションとザイルは相性が良いのだ。

突風や雪崩に吹き飛ばされながらザイルに命を託す場面は、SF大作ばりのスケールで繰り広げられる。

「戦狼 ウルフ・オブ・ウォー」(17年)のウー・シーン、41歳になったとは思えないほど若々しく、美しいチャン・ツィイー、「モンスター・ハント」(15年)のジン・ポーラン、そしてジャッキー・チェンとメインキャストはそうそうたる顔ぶれだ。

さらには顔面を100針縫う大けがから復活したフー・ゴー。5歳の時の自分のいたずらをきっかけに目の前で父親を暴力団員に殺害された過去を持つ女優のチュイニーツーレンも出演。実生活の重い過去をそのまま演技に燃やしているような、はみ出るような熱さを随所に感じさせる。

ドラマ部分も大映テレビ室作品を大がかりにしたような味わいがある。初登頂成功を疑われ続ける屈辱。60年の紛失がトラウマとなった75年登頂時のカメラへの執着…それぞれのたぎる思いが色濃く描かれる。

大がかりな特殊効果に埋もれがちだが、純粋なアクションにも見どころはある。ウー・ジンが廃工場をよじ登る序盤のシーンでは、その身体能力に驚かされる。

雪山のシーンが大半を占めながら、見ているこちらの顔がほてってくるようなエネルギーにあふれ返った作品だ。終盤、ジャッキー・チェンの意外な「静」の演技にほっとさせられた。【相原斎】 (ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)