ハリウッドで全米脚本家組合(WGA)と全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)によるWストライキが続く中、ベネチア国際映画祭が8月30日に幕を開けました。

カンヌ、ベルリンと並び「世界3大映画祭」の一つとされるベネチア国際映画祭は、翌年のアカデミー賞を占う上でも重要な位置づけとされ、最高賞「金獅子賞」を狙うコンペティション部門に選出された作品は毎年注目を集めます。しかし、今年はハリウッドの2大組合のストライキの影響で、オープニング作品に選ばれていたゼンデイヤ主演の「チャレンジャーズ」が出品を取りやめるなど、開幕前からさまざまな影響が出ていました。

スト中の俳優は出演作品の宣伝活動ができないため、多くの作品がスター抜きでのお披露目となり、レッドカーペットも例年に比べてさみしいものとなっています。一方で、スト中にもかかわらず映画祭に出席したスターたちもいます。9日の閉幕式まで11日間にわたって行われる今年の映画祭は、ストの影響を受けながらも当初の失敗に終わるという懸念を打ち消す豪華なラインアップとなっています。スターの出席情報を交えつつ注目の6作品を紹介します。

■「フェラーリ」(12月25日 米国公開)

マイケル・マン監督がメガホンを取り、イタリアの自動車メーカー「フェラーリ」の創業者エンツォ・フェラーリ氏の人生を描いた「フェラーリ」は、8月31日にお披露目されました。レッドカーペットには、主演の「スター・ウォーズ」続三部作のカイロ・レン役で知られるアダム・ドライバーをはじめパトリック・デンプシーらが登場。上映後は7分半に及ぶスタンディングオベーションを受けました。本作は俳優組合の交渉相手である全米映画テレビ製作者協会(AMPTP)に加盟していない独立系スタジオの作品であるため、特別に宣伝活動が許可されたと伝えられています。

アダム・ドライバー(2017年12月撮影)
アダム・ドライバー(2017年12月撮影)

■「マエストロ:その音楽と愛」(12月劇場公開予定)

アカデミー賞8部門にノミネートされた「アリー/スター誕生」(18年)で監督デビューを果たしたブラッドリー・クーパーがメガホンを取る長編2作品目となる「マエストロ:その音楽と愛」も、コンペティション部門の注目作品の一つ。本作は20世紀を代表する米指揮者で作曲家のレナード・バーンスタインを描いた伝記で、クーパーが主演も務めています。ネットフリックス作品であるため、俳優としてクーパーは映画祭に参加できないものの、監督としても2日に行われた公式上映会を欠席しています。

ブラッドリー・クーパー(18年12月撮影)
ブラッドリー・クーパー(18年12月撮影)

■「ザ・キラー」(10月27日 米国公開)

鬼才デヴィッド・フィンチャー監督の最新作「ザ・キラー」は、3日にお披露目されたものの、ネットフリックス作品であることから主演のマイケル・ファスベンダーら出演者は全員欠席。フィンチャー監督1人が、レッドカーペットを歩きました。上映後には5分間に及ぶスタンディングオベーションを受けましたが、複雑な心境だったと伝えられています。11月11日よりネットフリックスで配信される本作は、仏出身の作家アレクシス・ノラン氏による同名グラフィックノベルが原作で、殺し屋が雇い主や自分自身と戦いながら国際的な追跡劇に巻き込まれていくサイコサスペンス・スリラーです。

■「プリシラ」(10月6日 米国公開)

エルヴィス・プレスリーの元妻で映画「裸の銃を持つ男」シリーズなどで知られる元女優プリシラ・プレスリーが1985年に出版した回顧録「私のエルヴィス」を基に、エルヴィスとの出会いから結婚、離婚までを描いた「プリシラ」は、4日にお披露目されました。ソフィア・コッポラ監督がメガホンを取った本作は、カナダの制作会社が手がけていることから宣伝活動が許可されており、公式上映会にはプリシラを演じるケイリー・スピーニーとエルヴィス役のジェイコブ・エロルディが出席。コッポラ監督と共にプリシラ本人もレッドカーペットに登場し、作品に華を添えました。

■「メモリー」(9月8日 米国公開)

8日にお披露目されるメキシコ出身のミシェル・フランコ監督がメガホンを取る「メモリー」は、21年に「タミー・フェイの瞳」でアカデミー賞主演女優賞に輝いた主演のジェシカ・チャステインの出席が予定されています。本作は、チャステイン演じるソーシャルワーカーが、高校の同窓会で旧友と再会したことで、互いの人生が思いがけない方向に動き出すストーリーです。

■「悪は存在しない」(2024年公開)

22年にアカデミー賞国際映画賞を受賞するなど数々の国際映画賞を総なめにした「ドライブ・マイ・カー」で知られる濱口竜介監督の新作「悪は存在しない」は、アジアから唯一の出品となり、3日に公式上映が行われました。「ドライブ・マイ・カー」はカンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞しており、21年にも「偶然と想像」がベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員大賞)に輝いている濱口監督は、ベネチアでも受賞に期待がかかっています。

濱口竜介監督(2022年4月撮影)
濱口竜介監督(2022年4月撮影)

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)