東京・帝国劇場で28日まで上演中のミュージカル「ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド」を見てきました。2月6日に初日の予定でしたが、「開幕準備に想定以上の時間を要する」として、12日に初日を延期。計7公演が中止となった作品です。これまでも初日が延期する公演が多々ありますが、その理由は脚本の完成遅れのため稽古期間をとる必要があったり、コロナ禍では体調不良者が出るたびに中止となっていました。今回の「開幕準備に想定以上の時間」という中止理由は珍しく、それだけ舞台上で複雑な演出、仕掛けがあるだろうことが予想され、期待を持って劇場に足を運びました。

結論から言えば、すごい舞台でした。かつて帝劇で大型の海外発ミュージカル「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」を初演した時は、劇場での仕込みや舞台稽古の時間を3週間から2カ月とたっぷりとっていました。今回は1月公演の千秋楽から初日までの期間は10日ほどしかなく、製作に取り組むクリエーティブスタッフは大変だったろうなと思います。

原作の漫画を読んだこともなく、「ジョジョ」そのものにもあまり興味がなかったけれど、舞台は驚きにあふれていました。二重構造の回り舞台、場面転換の多さなど、これまで見た舞台でもトップクラスの複雑な演出、仕掛けでした。タイトル通りに「冒険」に満ちた舞台と言っていいかもしれません。

公演中止を経て幕を開けた「ジョジョ」ですが、救いは「ジョジョ」ファンで埋め尽くされた満員の観客の反応がとても良かったことです。カーテンコールでの拍手の熱量、スタンディングした観客の表情を見ると、この舞台に満足したことが読み取れます。それだけ原作の再現度が高い舞台だったということでしょう。本来なら数年後に帝劇で再演となるところですが、肝心の帝劇が来年2月で建て替えのため休館する予定で、再開場の時期は未定となっています。劇場が替わった中でのよりスケールアップした再演を期待したいものです。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)