ブラッド・ピットが主演と製作を務めた。知的地球外生命体を求める計画を主導し行方不明になった父を捜す物語。ピットは初の宇宙飛行士役、父を演じるのはトミー・リー・ジョーンズ。

主人公ロイが父を捜すという大筋と並行して、ロイの自分探しの物語でもあった。子供時代、父に置いていかれたという思いが心に深い傷を作り、人間関係をうまく構築できないロイ。ピットは、独白と、表情のアップ、細かい目の動きで、心の内を表現した。内省的で自制的、時に感情を発露させ、かつ優秀という難しい役どころを演じた。

心理的描写は多いが、SF的おもしろさも満載だ。近い未来を設定しているだけに「見たことがないけどこうなりそう」な感じがミックスされている。

冒頭から圧倒された宇宙ステーションの場面。月では採掘権を争って紛争が起きているし、有人基地で最も遠いのは火星。月に行くロケットで配られるアメニティーポーチは、今とあまり変わっていない。飛躍しすぎていない感が、リアルさとかえって若干の恐怖のようなものを感じさせる。太陽系惑星の美しさには感動の一言だ。【小林千穂】

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