冒頭のカーチェイスから一気に引き込まれた。ミッション車のBMWを天才的なドライビングテクニックで操り、市街地を激走する。スピンにターン、車幅がギリギリの狭い道を疾走するスリリングさには目をつぶりそうになった。

ステアリングを握るのは米アカデミー賞作品賞「パラサイト 半地下の家族」の娘役で注目されたパク・ソダム。本作ではワケありの荷物を運ぶ敏腕ドライバー(チャン・ウナ)を演じる。美大志願の詐欺師役から一転、ピンチでも動じないクールな表情がいい。緊迫したカーチェイス中にストローくわえてドリンクを飲むシーンは、クスリと笑える。

ウナが勤める会社は、表向きは廃車処理業だが、裏稼業として金さえ積めば何でも運ぶ「特送」を営んでいる。ある時、海外逃亡を図る野球賭博のブローカーと幼い息子ソウォンを港に運ぶ任務が回ってくる。ところがブローカーは捕まり、ウナとソウォンは悪徳警官、殺し屋、さらに「脱北」の過去を持つウナを秘密裏に調査する国家情報院に追われる。「私、失敗しないので」。大門未知子のような決めゼリフこそないが、「仕事」は完璧だ。【松浦隆司】

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