昨今、ますます増える漫画やアニメ、ドラマの実写映画化作品は、原作のファンがついておりヒットしやすい。一方で、原作のないオリジナルの映画化企画は、なかなか通らないし、公開しても当たりにくい。「屋根裏のラジャー」は原作こそあるが、英国の作家の小説で、日本での知名度は低く、オリジナルに近い作品だろう。知名度の部分でハードルはあるだろうが、超える価値のある1本だ。

主人公のラジャーは、少女アマンダの想像から生まれ、忘れられると消えていく運命を持つ友達だ。人間ではないながら、同じように心を持つ少年を描くために、フランスのクリエーターとコラボして新たなデジタル技術を用い、手描きで実現できなかった質感表現に成功。生身のような肌の質感は、現代のアニメの一歩先を行くと言っても過言ではないだろう。

13年「かぐや姫の物語」をプロデュース後、スタジオジブリを退社した西村義明プロデューサーが、15年4月に設立したスタジオポノックの6年ぶりの新作長編アニメだ。百瀬義行監督も、同作の高畑勲監督の右腕といわれただけに、キャラクターの表情、動き方はジブリ作品を思わせる。

スタジオジブリといえば、大人から子どもまで心躍るファンタジー性の強さが魅力だが、その要素も詰まっている。往年のジブリ作品ならではのファンタジー性と、次の時代のアニメを予感させる映像…見れば、心に、きっと何かが残る。【村上幸将】

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