将棋の豊島将之叡王(竜王=31)に藤井聡太2冠(棋聖・王位=19)が挑戦する叡王戦5番勝負第1局が25日、東京都内で始まりました。午前9時、対局が始まる直前、振り駒が行われ、先手は藤井2冠に決まりました。先日、名古屋市内で行われた「棋聖戦防衛祝賀会」で、「先後」のとらえた方について藤井2冠の「ポジティブ・シンキング」の一端を知ることができました。

奇数局の番勝負の第1局では、先手番か後手番かは「振り駒」で決めます。両対局者が駒を並べた後、記録係が上座の棋士の代理として歩を5枚取り、手の中で振って畳の上にまきます。表(歩)が多く出れば上座の先手で、裏(と金)が多ければ後手になります。先に指す先手番が主導権を握りやすいため、勝率は先手番のほうが若干、いいとされています。

祝賀会の会場では将棋ファンのお笑いコンビ「サバンナ」の高橋茂雄(45)、先崎学九段(51)と写真を見ながら棋聖戦の対局を振り返り、本音トークを繰り広げました。

棋聖戦第1局の振り駒の写真を見ながら、高橋が「先後はどれぐらい準備していらっしゃいますか」と質問すると、藤井2冠は「タイトル戦の第1局は振り駒になるので、基本的には後手になると思って対局に行っています」と返答。その理由として「後手になると思って、先手になると良かったと思うようにしています」。不利とされる後手番になったとしても、心を平静に保てるようにし、もし運良く、先手番になったら「ラッキー」と、とらえて対局に臨んでいるようです。

先崎九段は「なるほど、非常にポジティブな考え方ですね」とうなずいたほどでした。続けて先崎九段は「(先後は)それほど気にならない? どっちでも勝てると思っている(笑い)」と突っ込みを入れると、藤井2冠は破顔。「先手のほうがうれしいと思っていますが、タイトル戦は先後が交互にやってきますから」。長丁場のタイトル戦を見据えた、こちらも「積極思考」です。

今夏、3つ目のタイトル戦となる叡王戦5番勝負がスタート。過密日程が続きますが、こちらも前向きにとらえています。「豊島先生らトップ棋士の方と多く対戦できる機会はありがたいことです」。どんな状況でも自分の心を上手にコントロールし、大一番でも緊張せずに日々の研究の成果を発揮できるようにする「ポジティブ・シンキング」。物事のとらえ方にも将棋界の頂点を目指す19歳の強さの秘密があるのかもしれません。【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)