顔と名前はわかるのに“読み方”が出てこない人っていませんか?

過去にサッカー映画「U-31」を監督したこともあり、自他ともに認めるサッカーフリークの谷です。今年もよろしくお願いします。さて、正月といえば天皇杯の決勝。今年は帰省できず、家でじっくりとテレビ観戦。昨年王者の川崎フロンターレと、バットマン(古い!)こと宮本監督率いるガンバ大阪。注目すべきは、ルーキーイヤーの昨年大ブレークした三笘薫(みとまかおる)選手(この試合でも決勝ゴール!)。日本サッカー界注目の選手です。解説なんかではネイマールと評されてますが、アラフォー世代からしたら元日本代表の本山選手を思い出しますね。少しタイプは違いますが、ボールを持った時の雰囲気がなんともよい。そして顔もどことなしか似ています。

改めて、三笘と書いて「みとま」と読みます。Jリーグの試合を見るたびにそのキレ味に驚き、サッカー友達に何度となく自分から話題にするのですが、この「みとま」がなかなか出てこないんです。川崎の下部組織出身で筑波大学を経て入団…左サイドをキレキレのドリブルで上がっていく姿がネイマールというより本山に近くて…背番号は18番で…えっと…「みこけ」、いや…「みたけ」でもなくて…といった具合に、顔はもちろんプロフィルやプレースタイルまで事細かく説明できるのに、読み方だけがなぜか出てこない…。中継で何度も聞いているのに…。正直ここ最近というより、10年ぐらい、いや小さい時から名前を覚えるのが苦手だった気もしてきました。

さて本題。ナショナルクライアントといわれる大企業のCMで毎日見かける女優。愛嬌(あいきょう)のある顔で背は小さめ。声を聞くと意外とハスキーボイス。そう、名前は伊藤沙莉(さいり)。前述の話の続きだと、この「さいり」を覚えるのになかなかに苦労しました。「さり」で覚えるとお騒がせタレント?の加藤紗里がちらつき、そこからなぜか加藤茶の嫁(加藤綾菜)が出てきたりして、「茶さん元気かな」なんて思考がどうにもとっちらかってしまう。 顔も名前もでてくるのに、「さり」じゃなかったよな、なんて頭の中がぐるぐるするも、昨年の活躍により無事にインプットさせていただきました。長々とすみません。

デビューは03年のドラマ「14カ月~妻が子供に還っていく~」。映画「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」にも通じる若返りの物語。「若返り」の直接の原因となってしまう事態を引き起こすとあるので、なかなか重要な役だったのかと(未見)。その後コンスタントに出演を重ね、一昨年話題となったNetflixのドラマ「全裸監督」に出演し、昨年はNHKのよるドラ「いいね!光源氏くん」でヒロイン、映画では「劇場」(20年)などの大作から「タイトル、拒絶」(19年)、「蒲田前奏曲」(20年)と良質なインディペンデント作品がこれでもかと並ぶ。個人的には、「寝ても覚めても」(18年)や「劇場」などの主人公ではなく、そこに近いポジションが抜群にうまいと思う。違った角度で、視聴者の気持ちを代弁してくれる貴重な存在。今や替えの聞かない女優さんの一人かと。

本格的なブレークを果たした伊藤沙莉(いとうさいり)、今年も大注目です。(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画監督・谷健二の俳優研究所」)

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。また、カレー好きが高じて青山でカレー&バーも経営している。20年11月28日には最新作「渋谷シャドウ」も公開。

伊藤沙莉
伊藤沙莉