日本テレビ、テレビ朝日、フジテレビの社長人事がこのほど発表された。6月の株主総会と取締役会で正式に決定する。元敏腕プロデューサー、元敏腕編成マンなど、いずれもスター人材の登板という印象だ。陽性の人柄に加え、マスコミ対応にたけ、自分の言葉で発信する個性も共通している。令和の放送界をけん引するカラフルな社長対決の行方に注目したい。

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日テレの新社長となる小杉善信副社長(65)は、プロデューサーとして「クイズ世界はSHOW byショーバイ!!」「夜も一生けんめい」「マジカル頭脳パワー!!」など90年代の看板バラエティーをいくつも手掛けたヒットメーカー。94年、当時12年連続視聴率3冠王の座にあったフジテレビを逆転し、03年までの日テレ時代を築いた立役者だ。

ドラマでも、チーフプロデューサーとして「家なき子」(94年)「金田一少年の事件簿」(95年)「星の金貨」(95年)などのヒット作を制作している。8年間にわたり経営の指揮を執ってきた大久保好男社長(読売新聞社出身、次期会長)に代わり、久々のプロパー社長。記者発表後、取材陣から「バラエティーの代表作は」「ドラマの代表作は」と広報に質問が相次いだ光景にもスペシャル感が漂う。

バラエティー畑出身らしく、要点を心得たキャッチーな発信力の持ち主でもある。15年、日曜午後10時半にドラマ枠を新設した際の定例会見で、「月曜からの仕事に備えている人が多い日曜のそんな時間に、連ドラ見る人がいるのでしょうか」という質問があった。用意された答弁の繰り返しで決定打に欠ける中、小杉氏が「○○さんの生活スタイルは知ったことではありませんが、見る人は見ると思います」と和ませて完封していたのが印象的だ。

一方、フジテレビ新社長となる遠藤龍之介専務(62)は、芥川賞作家遠藤周作さんの長男。編成担当時代に「銭形平次」「ジュニア 愛の関係」などを手掛け、93年には市川崑監督を起用し、日本初の長編ハイビジョンドラマ「その木戸を通って」を制作している。主に編成マン、広報マンとして要職を歴任。05年、フジの筆頭株主だったニッポン放送の株式取得をめぐるライブドアとの騒動の際には広報部長として対応にあたるなど、マスコミ対応にたけた人物だ。

文豪の長男、慶応ボーイというピカピカの経歴の持ち主で、あらゆる業界に顔が広く、人から嫌われないユーモアに富んだ人柄。「社員証を携帯しましょう」の社内ポスターのモデルにもなっている。取締役となって以降も広報担当が長く、新聞記者にケータイ番号が知れ渡っているが、変えるつもりはないようだ。2年前に社長に就任し、「非常事態宣言」を行った宮内正喜社長の視聴率改革が成果を見せ始め、3月に底打ち宣言をした上昇機運でのバトンタッチとなる。

テレビ朝日の新社長になる亀山慶二専務(60)は、01年世界水泳福岡大会を現場責任者として指揮したほか、サッカー、ゴルフ、フィギュアスケートなど、2000年代の大型スポーツ物件で手腕を発揮。こちらも編成、制作分野で華々しい実績がある。

ちなみに、昨年TBS社長になった佐々木卓氏は報道畑出身で、元早大のラガーマン。明るい人柄で社員にも人気がある。テレビ東京の小孫茂社長も陽性なキャラクター。定例会見で出川哲朗を激賞してヤフーニュースになったり、どんな質問にも自分の言葉で率直に語るタイプだ。

放送を取り巻く環境が激変し、今や社長会見のあらゆる発言がネット記事になる時代。発信力のあるリーダーが求められるのは自然な流れでもある。それぞれ、令和の民放をどうかじ取りするのか注目したい。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)