Snow Manが座長を務める舞台「滝沢歌舞伎ZERO 2021」(新橋演舞場)が開幕した。

昨年、念願のデビューを果たした直後に新型コロナで世界が様変わり。彼らにとって、待ちこがれた客前での初パフォーマンスとなる。ため込んだエネルギーを存分に発揮し、9人のパワーが劇場にみなぎっていた。

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「春の踊りは、よ~いやさー」。滝沢歌舞伎のDNAである掛け声を岩本照が発し、2年ぶりにホームに戻ってきた「滝沢歌舞伎ZERO」の始まり。テーマソング「ひらりと桜」とともに300万枚の桜の花びらがドサーッとステージに落ちて舞い上がり、花吹雪となって劇場中に降り注いだ。

これまでピンク色だった桜吹雪は、今年は青。医療従事者への感謝とエールを込めた演出で、メンバーたちの衣装も青だ。ピンクほどハッピーではないあたりが、誰もがしんどい今の時代にはちょうどいいのかも。心躍るメロディーと、りりしく青いキラキラの世界が、何もなかった春に寄り添ってくれているようで、目に染みた。

感染対策のため、客席通路を使ったり、客席に水がかかるような演出ができない制約はあるものの、「腹筋太鼓」や歌舞伎パートへの導入となる「生化粧」などの名物演目はほぼ無傷で、この作品の底力がよく分かる。総使用量10トンの水が降る中でのダンスも、客席との間にディスタンスのエプロンステージを作ったり、立ち位置や動きを工夫したり。従来型と遜色ない迫力に驚かされた。

そして、Snow Manが生き生きと大きく見えた。演出を務める滝沢秀明氏から作品を引き継いだ19年版は、作品の看板に振り落とされないようがむしゃらな熱量で駆け抜けた印象だったが、今回は、客前でパフォーマンスできる喜びとプライドを堂々と表現しているようだった。

昨年、公演中止による映画化で「映像」の視点から作品と向き合った経験は大きいだろうし、何より、結成9年でデビューを果たした自信と自覚なのだろう。自らもジャニーズの看板のひとつとなり、目の色と緊張感が伝わってくる。もともとダンスもアクロバットも一流。ジャニーズの舞台には欠かせない存在ではあったが、名実ともに“自分たちの客”を得た実感ほどタレントを燃えさせ、勇気付けるものはないのだと実感させられる。

19年にラウール(17)ら3人が加入して9人体制にパワーアップ。そのチームワークも形になっていた。

ダンスや殺陣、腹筋太鼓など、生き生きとアイコンタクトをとりながらダイナミックなステージを見せていたし、ラウールのソロダンスの突き刺さるような表現力も活かされた。2部の「鼠小僧」の喜劇では、タッキーの横で磨いてきたそれぞれの役どころを進化させ、爆笑を勝ち取っていた。奥行き、花道、せり、2階席など、劇場を知り尽くした快刀乱麻の数々に、コロナ禍でどう観客を楽しませるかという滝沢氏とSnow Manの挑戦が痛快。「滝沢歌舞伎」は、しっかり受け継がれたのだと感じた。

また、お客さんも素晴らしかったことも特筆しておきたい。感染対策のため黄色い声援は自重し、感動は精いっぱいの拍手で表現。花びらや小判など、降り物は自分のひざに落ちたものだけ大事に手にし、「床に落ちた降り物は拾わないで」という開演前のアナウンスを守っていた。コロナ禍で、演者と一緒にこの舞台を成功させるのだという一体感があり、こういうファンに支えられるSnow Manは果報者だと思う。

「皆さんの心の中にも、夢小判が満開の桜のように舞っていることを願います」(岩本照)。帰り道を晴れ晴れと歩きたくなる、そんな後味が今も残る。

公演は5月16日まで、東京・新橋演舞場で。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)