歌手八代亜紀さんが昨年12月30日に急速進行性間質性肺炎のため死去し、9日、公式サイトで発表されました。73歳。昨年、膠原(こうげん)病と診断され、闘病を続けていました。

抜群の歌唱力と表現力、歌謡界に残した功績の数々は言うまでもありません。「おんな港町」「舟唄」など、ヒット曲のかっこいい女性像が印象に残りますが、八代さん自身、誰にでもオープンマインドで壁を作らない、かっこいい女性でした。

90年代、「厚化粧」というイメージが一人歩きしていた時期に、取材陣の前にすっぴんで登場した時はしびれました。

93年、新曲「カラス」をリリースした八代さんが、栃木・烏山でPRイベントを行った時のこと。イベント終了が夜であるため、取材したスポーツ紙6社は近くの宿泊施設に一泊する行程となっていました。共同の食堂で各社が食事をとっていると、風呂を済ませた八代さんがすっぴんで現れ、フランクに懇親の場を設けてくれました。

この数年前に、嘉門タツオさんが替え歌メドレーの中であの有名な「誰も知らない素顔の八代亜紀」のフレーズを歌ったばかり。さまざまなジョークの尾ひれ付きで一気に広まっていた時期でしたが、八代さんは「来てくれたお礼に“素顔の八代亜紀”を見ていただこうと思って」とチャーミングに笑い、「厚化粧じゃないでしょ?」「笑ってもひびなんか入らないわよ」と、とにかく朗らかでした。

八代さんの隣には当時婚約中のマネジャーもいて、懇親会が一気にハッピーになったのを覚えています。「来年挙式」を明かすリップサービスもあり、翌日の紙面を飾ってくれました。

八代さんはこの時43歳。すっぴんはメークした時と全然変わらない美しさで、肌もつやつや。むしろ、かなりの薄化粧だったことが判明しました。美容法を聞くと「しっかり洗顔し、毎日3キロ歩くこと」と語ってくれました。お開きになった後、女性用の洗面所へ顔を洗いに行くと八代さんがいて、「ここに泊まっている女の人は私たちだけみたい。貸し切りね」。当時珍しかった女性記者を笑顔で気遣ってくれたのもありがたい思い出です。

歌手としても、女性としてもかっこいい、歌謡界のスーパースター。名曲の数々と、最高の歌声をありがとうございました。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

スッピン初公開 別冊宝島CM収録直後に会見した八代亜紀さん(97年7月撮影)
スッピン初公開 別冊宝島CM収録直後に会見した八代亜紀さん(97年7月撮影)