落語家林家三平(45)が1日、祖父の故七代目林家正蔵さんが創作した落語「出征祝」を東京都台東区のホールで約70年ぶりに口演した。

 戦意高揚を目的に創られた「国策落語」とされる演目で、戦時下の空気を投影した噺(はなし)に観客は聞き入った。

 終演後、三平は「戦争を肯定するためのツールだった演目。今の時代だからこそ、戦争賛美の噺に観客は抵抗を感じると思うし、国のあり方を考えるフィールドになるのでは」と語った。

 「出征祝」は大商店の若旦那に召集令状が届き、番頭や使用人が喜ぶ噺。10代なのに遺言を堂々と語る若旦那、「待ちに待った召集令状」と喜ぶ大旦那が登場し、酒宴に向けて一升瓶を「2本買った(日本勝った)」というサゲで締める。

 三平は昨年出演したテレビ番組でこの台本を知った。検閲の痕跡を感じる言葉を見て、祖父から背中を押されたと感じ、再現に踏み切った。

 戦時中、祖父は慰問に回り、父の故初代三平さんは特攻要員に。母の海老名香葉子さん(82)は東京大空襲で両親や兄弟を失った。三平は「戦争体験のない私には難しかったが、若いころの父の気持ちを思った。今後も平和を願う方々の前で演じたい」と話した。

 口演は三平の出演映画「サクラ花 桜花最期の特攻」の上映会とともに行われた。