「花街の母」などのヒット曲で知られる大阪在住の作詞家、もず唱平氏(79)が24日、大阪市内で、作詞家生活50周年会見を行い、会心のフレーズにデビュー作「釜ケ崎人情」につづった「七分五厘」をあげた。

 大阪に拠点を持ったまま半世紀に渡り、作詞活動を続けてきたもず氏は、五木ひろし、川中美幸、鳥羽一郎、中村美律子ら、多くの歌手に詞を書き、CM曲なども含めると「400曲以上」を生み出してきた。

 「東京の言葉、空気が合わん。憎いわけやないねんけど」と笑いながら、大阪、関西にこだわり、住み続けている。作詞、作曲家を「関西から発信する人が極端に少ない職域」と表現するもず氏。関西にこだわってきた背景には、原点の「釜ケ崎-」があった。

 もず氏は「スラム街を歌にしたのは、僕が最初やないか(と)思う。そういう自負はある」と言い、初作品への思いは深い。釜ケ崎とは、大阪市西成区の通称「あいりん地区」の別称で、そこに生きる人の思いをしたためた。

 「地勢と歌は密接。大阪の空気を吸ってないと、大阪の歌は書けない」

 職を転々としつつ、苦労を重ねて天職の作詞業にであったもず氏の思いが込められており、詞の中に「よく人は『腹八分目』と言うけど、七分五厘でも人は生きられる」との気概をこめて、「七分五厘」の表現を使ったという。

 もず氏の身上、熱量が詰まったフレーズでもある。半世紀の作詞家生活でも、この詞を生んだ「釜ケ崎-」を「一番、思いのある曲」と振り返った。そして、照れたように「まあ、一番好きなのは、一番売れた曲、花街の母やけどね」と笑いながら語った。

 そのもず氏の50周年を記念して、今秋から来年にかけて、記念コンサートとディナーショー7公演が決まった。

 記念公演は、9月2日の滋賀・ひこね市文化プラザで「もず唱平 作詞家50周年記念スペシャルコンサート 演歌祭り」からスタート。川中、鳥羽、中村や成世昌平らが出演する。川中はすでに、主催者側に「私は全部、出席します。司会も務めさせてもらいたい」と話しているという。

 コンサートはその後、9月9日に神戸国際会館、来年1月24日にロームシアター京都、同1月30日に奈良県橿原文化会館、同6月5日の枚方市民会館で予定。ディナーショーは今年10月9日に「作詞家もず唱平の50年を唄う 成世昌平ディナーショー」として、ホテルグランヴィア大阪で開催。来年3月25日にも同所で「作詞家もず唱平の50年“ごんたの会”記念ディナーショー」が予定され、これには鳥羽、鏡五郎、三門忠司の出演が決まっている。

 また、今年10月から、大阪・心斎橋の作家養成スクール「心斎橋大学」で、作詞講座「もず唱平 作詞家養成スクール」も開講。もず氏は「テーマは自分史から自分詞。自分の人生を切り開いて歌にするには、どうしたらいいか教えたい」と話していた。